なぁお前何やってんの。
そう尋ねると、すぐに「お父さんと喧嘩したの」と返ってきた。
喧嘩って。
かなりの違和感があった。
既に日は暮れ、夜露だらけのベンチに腰を掛ける久遠。
相変わらず、コイツの考えている事がよめない。
そして一点を見つめたまま、「お父さんと、喧嘩、したの」ともう一度呟いた。
気持ち悪いほどの静寂の中、俺の鼻をすする音が辺りに響く。
濃く白い息を吐き、久遠も鼻をすすった。
「…行くぞ」
「どこに?」
「こんなつまんねーとこじゃなくて、街の方に遊びに行くんだよ」
そう言うと、久遠は目を丸くした。きっと、俺がこんな事を言うなどと思っていなかったのだろう。
親と喧嘩した時は、今日はもう帰らないくらいの勢いがないといけないだろ。
「でも、もう時間も遅いよ」
「あ? それなら帰れ」
「それは、いや」
久遠は俺の手を握ると、ふるふると睫毛を揺らした。
さて、最初はどこに連れていこう。
(お父さん、ごめんね)
わたしは悪い子になってしまいました
――
素敵な企画「わたし」さまに提出させていただきました。