わたしが「かわいい」や「きれい」などと言うと、彼は何でも買ってくれた。
別に欲しいだなんて一言も言っていないのに。
通りかかった小さな雑貨屋さん。
かわいいくまのぬいぐるみとガラス越しに目が合い、わたしはついかわいいと零した。
「では、そのぬいぐるみを貴女にプレゼントしましょう」
「…もういいです。大丈夫。 さっきからエドガーさんにはたくさん買ってもらっているので」
そろそろ断りをいれなければ、エドガーさんに悪いと思った。
あまり気をつかわせたくはないから。
「何故です? 欲しくはないのですか」
「ふふ、かわいいと欲しいは別ですよ。 このくまさんのぬいぐるみはかわいいけど、欲しくはありません。 この子はここにいたほうが幸せです。きっと。」
くまのぬいぐるみは、一番日当たりのいい窓際にちょこんと座っている。
隣にはリボンのついたくまもいるから、カップルなのかな。
「そうですか。 貴女がいらないというのならばやめましょう」
「…じゃあ、わたしからエドガーさんに何かプレゼントできるものはありますか?」
わたしが尋ねたら、エドガーさんは少しだけ眼を瞑って、
「そうですね…、私の欲しいものは、お金で買う事ができない。 だからまたいつか」と言った。
睫毛が長くて、鼻が高くて、髪が綺麗で。少しだけ羨ましくなった。
「エドガーさんが欲しがるくらいだから、きっと素晴らしいものなんでしょうね」
「えぇ、とても。 驚くほど美しい」
そう言い終わった後、彼は優しく目を細めて私を見つめた。
もう少し後の話