ゼリーが食べたい。
そう言って塔子は、枕に顔を突っ伏したまま動かなくなった。
あいにくだけど、ゼリーはないんだ。
「塔子。…塔子。
あいにくだけど、今ゼリーはないよ」
彼女は何も言わない。
こういう場合、僕はどうしたらいいのだろうか。
塔子は単純そうで、実は複雑だ。
これは最近わかったことなんだけど。
「塔子。ゼリー、買ってこようか」
少しの沈黙のあと、塔子はむすっとした顔を上げて、僕のほうに手を伸ばしてきた。
僕はそれを受けとめる。 優しく、ね。
「一体どうしたんだい?」
コンビニへ一緒に行こうか。と問えば、塔子は「…ゼリーなんかいらない」とぶっきらぼうに言い放ち、喉を少しだけ鳴らした。
そうか、今日の君は、
「随分と甘えん坊だね」
僕の首に回された塔子の手が、ぎゅっと強くなった。
wheedling child