排水口、詰まってるから。




ヒロトはそれだけ言うと、家の外へと出ていった。



何故、何故私に言うのだ。
詰まっていると気付いたのなら、お前が掃除をするべきではないのか。

しかし、忌まわしい赤髪はもういない。





私は風呂場へと向かった。

住み馴れた施設、と言ったら少々おかしい気もするが、まぁ間違ってはいないのでそう呼ぶ。


住み馴れた施設の廊下の壁には、小さい頃私たちがクレヨンで落描きしたあとが未だ消えずに残っている。


その時に「クレヨンは油性だから消えないのよ」と、姉さんが私たちを叱った。







そして問題の風呂場だ。
風呂場の戸を開ければ、お世辞にも綺麗とは言えない光景が広がっていた。

排水口が詰まっている為に水が流れず、床に水溜まりを作っている。


私はとりあえず掃除をしようと思い、ぬめる排水口の中に手を突っ込んだ。

ゴポ、という鈍い音と同時に、勢い良く水は下へと流れていく。
小さな渦をつくりながら。



「…髪の毛か」



突っ込んだ左手には、色とりどりの髪の毛が絡まっていた。

髪の色で、大体誰なのかはわかるが。



同じ風呂に入り、同じ食事をとる。
眠たくなったら、皆同じ屋根の下で眠りにつく。





あぁ、 これが、










「玲名、お皿を並べるから少し手伝ってくれる?」












家族、というものか。








血の繋がりは一切ないけれど、きっと家族とはこういうものなのだろう。


私は絡まった汚い髪の毛を見つめてそう思った。











トーストとスープ





それは決して豪華な食事ではないけれど。











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