誰かがいなくなる夢を見たんだ。
円堂はぼそりと呟き、小さく息を吐いた。
俺が、誰かが死んだ夢か? と問えば、ううん。違う。死んだとか行方不明だとかそんな具体的なモノじゃないんだよ。 ただ、本当に誰かが"いなくなった"んだ。 と抽象的な答えが返ってきた。
俺には、円堂の言っている意味がわからない。
「豪炎寺。 誰かがいなくなるって、寂しい事だと思う?」
その時の円堂の声ときたら、実に弱々しく他の仲間には聞かせられるものではなかった。
「…寂しい事、だと思うぞ。
考えてみろ、円堂。 ある日突然、今まで共に過ごしてきた"誰か"がいなくなるんだ。 …俺はあまり考えたくないな」
「寂しい事なのか。
俺は、俺はね、豪炎寺。
俺は不思議でたまらないんだ。 だって消えちゃうんだぜ? 今までずっと一緒にいたのに、次の日にはもういない。 寂しいより先に、不思議だなって思うんだ。
その後、心にぽっかり穴があいた気分になる」
夢のはずなのに、
俺はココがまだ痛い。
円堂はそう言い、自分の胸ぐら辺りをぎゅっと掴んだ。
すまない、円堂。
俺にはお前の言っている意味がまだ理解できないようだ。
夕焼けがそんな俺の目を突き刺そうとする。
たまらず目線を右下に移した。
だから俺はその時、
円堂の瞳に涙がいっぱい溜まっている事に気付けなかったのだ。
はて、太陽とはこんなにも大きかっただろうか。
いなくなるについて考える