塔子が今日はやたらと甘えてくる。


少々おかしいと感じつつも、抱き付いてくる彼女を抱きとめた瞬間にその理由がすぐわかった。


身体がとにかく熱いのだ。
これは完璧に熱がある。


熱がある時に甘えるという動作は、小さい子どもによく見られる行動だ。





「塔子、熱があるだろう。
体温を計ってみろ」


体温計を差し出せば、塔子はしぶしぶと脇に挟んだ。 別に体調悪くないだの元気だのと言っていたが、全く説得力がない。


数分たっても体温計が鳴らないので、塔子の挟み方が悪いのか体温計自体が悪いのかと考えたが、確かこの体温計は基礎体温計だ。


基礎体温計は時間がかかる代わりに、正確な体温がわかる。
4桁の数字が表示されるようになっているのだ。



それからまたしばらくすると、ピピピピという電子音が部屋に響いた。
塔子は体温計を俺に渡す。

何故か嬉しそうな塔子の顔が目についた。
熱がなかったのだろうか。



「38.14…か。
大分あるな。 今日はいいから大人しく寝ていろ。 いいな?」


夏風邪には何が効くのだろうか。
そんな事を考えながら、粥を作ろうと立とうとした。



「ねぇ鬼道」


「どうした? 何か食べたいか?」


「あたしと鬼道の背番号だよ」



一瞬何の事だかわからずに、塔子の体温をもう一度頭の中で繰り返す。



38.14





あぁ、そういう事か。





こんな些細な事ですら、俺たちを味方してくれているのかと思うと自然と口元が緩む。



いてもたってもいられなくなり、俺は塔子にキスをした。




「風邪、うつるよ」



「それが狙いだからな」






お前の持っている風邪菌すら愛しく感じる俺は末期なのだろうか。















* Thank you very much,indeed!







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