例えば、
今ココに100人ほどの人間がいるとする。

そうしたらきっと100人中95人くらいの人が今の状況を「いい感じ」だと言うのだろう。
残りの5人は負け犬の遠吠えさ。



「塔子の髪はふわふわしているね。美味しそうだ」




ベッドの上。
僕と塔子は珍しく2人きりの時間を楽しんでいた。(いちゃいちゃ、と言えばいいのかい?)


塔子の髪が美味しそうだったから思わず、朱色の髪の中に自分の顔を埋める。



「ふふ。アフロディ、くすぐったい」


そういいながら僕を押す塔子の上に乗ってみた。
見下ろした先の君の顔は、ほんのり桜色。


思わず口付ければ、少し物足りなそうにこちらを見てきたので、もう一度。


困った困った、非常に困った。
もう止まりそうにない。


だが、塔子の首筋まで口付けを落とし終わったところで、最悪のミスを犯した事に気が付いた。



まだ僕はシャワーを浴びていない。


シャワーを浴びずにこれから先、だなんてそんな事、神は許してくださっても僕は絶対に許せない。いや、許さない。


目の前にはこんなに美味しそうなデザートがあるのに、蛇の生殺しだね。



「…アフロディ、どうしたんだ?」


「シャワーを浴びてくるよ」


すぐ戻ってくるから待っていてね兎ちゃん。とまた口付けを落とす。


塔子の潤んだ瞳が僕を睨んだ。







*







早めにシャワーを浴びて、気になって仕方がないベッドの上を見たら




まさか、





(…やはり先にシャワーを浴びておくんだった…)





すでに夢の中にいる彼女にしぶしぶと布団を掛けなおし、熱を冷ます為にその辺の雑誌をかき漁った。





(ここまでくると笑えない)












こんな話って、






BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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