鬼道の部屋は広い。
ベッドも大きくてふかふかしている。
あたしの部屋とそんなかわらないはずなのに、なんでこんなに広く感じるんだろう…
辺りをきょろきょろと見渡していたら「お前の部屋は片付いていないんだ」と頭をぽかんと叩かれた。
あんたはいつから読心術が使えるようになったんだよ。
遊びに来たからって、特別する事なんかない。
しばらく下らない話をして、そのあと急に鬼道が肩が凝ったなんて言いはじめたからマッサージをしてあげたり。
ふかふかのベッドの上はマッサージをしている側にも十分に睡魔を誘う。
「最初の頃よりは上手くなったな。初めてやってもらった時は、肩が砕けるかと思った」
さらりとかなり失礼な事を言われ、悔しくなったので鬼道の首筋にかぷりと噛み付いてやった。
後ろを振り向く鬼道の顔は明らかに不機嫌そのもの。
それさえも面白く感じたあたしは、次に鬼道の頬に両手を添えて思い切り引っ張ってみた。
「あはは!
お饅頭みたいだ!」
予想外の間抜け面に笑いが止まらなくなってしまい、呼吸がうまくできない。
さすがにそろそろ怒られるだろうと思ったが、笑いを止めるという事はなかなか難しいのだ。
「…ほう、いい身分だな。塔子」
とたんに低くなる彼の声に少しどきっとした。
もちろん悪い意味の方で。
「ふふ、ご、ごめん」
涙を拭きながら謝ると、次は鬼道の細長い指があたしの両頬に伸びてきた。
「うー、いひゃい」
「俺のほうがもっと痛かったぞ」
「うひょだ、しょんな強くひっひゃってないよ」
「ははは、何て言っているのか全く解らないな」
やられっぱなしはあたしのプライドが許さないので、手元にあった枕を投げ付けてやった。
鬼道はすかさずキャッチ。さすがは日本代表だ。
こんなどうしようもない争いを数分間続けて、最終的にあたしが押し倒されるといった形で収拾がついた。
「ねぇ鬼道、重いよ。どいて」
「知らん」
「もう!知らんじゃないだろ!」
早くどけー!
と鬼道の肩を押したけどびくともしない。
さすがは日本代表。
「ねぇゆーと、どいてよ…お願い」
こうなったら半ばやけくそだ。
どうだ、これで退く気になっただろ。
「…お前な、誘ってどうするんだ」
キスされたあとに、やけくそになった事を激しく後悔した。
日本代表も所詮男だったというわけか。
彼はふまじめ