隣を見れば、華奢な足がベッドからはみ出している。


塔子は起こさなければいつまでも眠っているタイプの人間だという事に最近気が付いた。

俺は塔子を起こすタイミングがいまいち掴めず、とりあえず掃除機を取り出してわざとらしく部屋の掃除を始めた。



掃除機をかけてから数分で、盛り上がっていた布団がもぞもぞと動き出し、塔子が布団から不機嫌そうに顔を出した。




俺は掃除機を止める。




「おはよう」



「…おあよ、あつい」



今の時期、布団に丸まって寝るのはさすがに暑いだろうな。

キャミソールに短パンといった随分涼しげな格好だが、暑いものは暑いという事か。



「シャワーを浴びてきたらどうだ? 汗をかいただろう」


そう告げれば、塔子はのっそりとベッドから下りてぺたぺたと俺の所まで歩いてくる。
そんな歩き方が少しだけペンギンと重なり、ここに佐久間がいなくてよかった などと情けない事を考えてしまった。




先程の不機嫌そうな表情は微塵もなく、上機嫌な様子で抱き付いてくる塔子を抱き留めた。
塔子の匂いで目眩をおこしそうになったが、なんとか耐える。 余裕を見せなければ、格好がつかない。


「どうした」


しかし、声が少し上ずった気がする。
どこまでも塔子の前では格好悪い自分に失笑した。



「今日! どこ行く!?」


今日…?

あぁ、そういえば出掛ける約束をしていたな。

一応言っておくが、決して忘れていたわけではない。


「そうだな、塔子はどこに行きたいんだ?」


「駅前に新しくできたお店あるだろ? そこ行きたい!」

「じゃぁ決定だな。ほら、シャワーを浴びてこい」


「やったー! すぐ浴びてくるからな!」



待ってろよ! と言いながら塔子は部屋から出ていった。

待ってろって…、お前を置いて俺1人で行ってどうするんだ。



緩もうとする口元を抑えつつ、再び掃除機のスイッチを入れた。









ねぼすけと掃除機







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