なんとなく付いていた深夜のテレビ番組。
大きい画面には、
泣きながら抱き付く女とそれを抱き留める男の姿が映し出されていた。
あー、はいはいはい。
どうせキスして終わりでしょ。
「くだらない」
自然と零れた言葉と同時にテレビの電源を落とす。
暗くなった部屋の中で、カラフルに点滅する携帯に目がいった。
こんな時間に誰だよ。
アドレス変更メールだったら怒るぞ。
なんて、うつらうつらしている脳内で考えていたわけだが。
「……、アフロディ…?」
珍しすぎるまさかの受信者と、ディスプレイから放たれる光に思わず目を細めた。
*
「久しぶりだね、塔子」
「久しぶり。どうしたんだ?急に会いたいだなんて」
明日、暇だったら会ってくれないか。
と、メールの内容はいたってシンプルだった。
別に暇じゃないけど、あたしも久しぶりに会いたかったから近くの喫茶店で待ち合わせる事にした。
そして今のなんだか初々しい会話に戻るわけだ。
「ふふ、大した用事じゃないんだけどね。
久しぶりにこっちに来たものだから、折角だし君に会おうと思って。」
そう言いながらコーヒーをすするアフロディは、とても綺麗でなんだか羨ましくなった。
しかもアフロディの私服は凄くお洒落だし。
…なんであたしスーツで来たんだろ…
これじゃぁ完璧に浮いている。もちろんあたしが。
「ところで塔子、君は恋をしているかな」
突然の質問に、自分の脳内スーツ談議は一瞬にして流された。
恋?
あたしが、
恋?
君は鯉釣りをしているかな、の間違いじゃないのか。
「その様子を見て安心したよ。やはり君は面白いね。」
「な、失礼な奴だな!
恋なんてしたって面倒なだけじゃないか。
あたしは恋なんてしないし、恋人だっていらない。面倒くさい」
「…驚いた。
まさかそこまで言うとはね。
じゃあ聞くけど、そんな事言っておきながら誰かに恋してしまったら君はどうするんだい?」
なんだよ、アフロディの奴。
こんな下らない話をするためにあたしを誘ったのか。
「そんな事わかんないよ。
恋なんてした事ないんだから」
半ば適当に答えを返す。
アールグレイが冷めて美味しくない。
あたしは冷たい紅茶は嫌いだ。
そんなあたしをからかうように、アフロディはこう言った。
「じゃあ、僕に恋してみてよ」
ああもう何なのコイツ!
私服がスーツで何が悪い