小さな頃から男だ女だと区別されるのが大嫌いだった。
最近はようやくこの感情が薄れてきたと思っていたが、FFIのお陰でまた再発。
合宿中には差し入れを持っていき、悩んでいるメンバーがいたら声をかけ、アジア予選では全力で応援に行って、出発の時には笑顔で送りだした。
あたしの笑顔が皆の瞳にどう映っていたかはわからない。
本当はその時、とびきりの笑顔とは裏腹に、あたしの胸の奥にはどろどろとした卑しい物が渦巻いていたのだ。
なんで女は出られないの。
こんな事をずっと考えているせいか毎日気持ちが悪かった。
この数ヶ月で、あたしは胃薬と大親友になれたぐらいだ。
と、こんな事をあんたに愚痴っても仕様がないんだけど いつも陽気で能天気で明るいあんたなら適当に流してくれるかと思ったからさ。
…思っていたのに、
「塔子、ごめんよ…
塔子がこんなにも悩んでるのに、ミーは何も気付けなかった」
まさかここまで気にしてくれるとは。
「ち、違うよ。ディランは何にも悪くない!あたしがただ勝手にディランに愚痴言っちゃって…その、」
そうだよ
あたしが勝手にディランに不満をぶつけているだけじゃないか。
結局一番男と女の事を気にしているのはあたしだ。
本当に情けなくて、厭らしい自分に腹が立つ。
「塔子が女でも男でもミーの気持ちは絶対変わらないさ」
ディランらしい慰め方。
あたしはディランに凄く助けられているんだ。
有り難さ以上に、何もディランの助けになれていない自分を恨んだ。
「ミーは塔子の事が本当に本当に大好きだから、ミーにできる事ならなんでも言ってよ。塔子の力になりたいんだ」
「…じゃあディランも女になってよ」
自分の幼稚さに思わず心の中で大爆笑。
とんちんかんな事ばかり言って、いつもディランを困らせてしまうあたしなんて、いないほうがいいんじゃないか。
馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ、って一発怒鳴ってくれればいいのに、
「オーケーオーケー。明日からドレスでシュート練習したらいい?」
だなんて真面目に聞いてきたものだから、ディランの温かさと優しさに鼻の奥がツンとした。
あたしはすぐさま目の前のユニフォームに飛び付き「嘘に決まってんじゃん、ばかやろう」とだけ吐き捨てた。
汗と土の匂いに思わず顔をしかめる。
ドレスの色は黒と白