冷たい口づけ


「なんで・・・なんでなんだ・・・!!何故君は・・・、俺の前から姿を消したんだ・・・!!」

崩れ落ちる青年、傍らはひっそりとその姿を心配そうに見つめる女の姿。

「・・・彼女・・・、るったの行く先に心当たりはないの?」

その問いに青年は、物憂げに首を横に振る。

「・・・あいつの行きそうな場所は、しらみつぶしに探した。・・・でもっ・・・、」

青年は、悔しげに己の拳を握りしめる。

その辛そうな姿に、女も苦しげに顔を伏せる。

「・・・仕方ないわ・・・。もう、警察に頼りましょう・・・私たちのやれることは全部やったわ・・・」

青年は呟く。

「・・・俺が・・・、目を離してたからいけないんだ・・・!俺が・・・、君と一緒に居る時間を優先して・・・あいつの・・・るったの気持ちも考えずに・・・!」



「言わないで!!」

女は感情的になった青年を思わず抱きしめる。
私も・・・私も悪かったと泣きながら

そう・・・、その彼女と彼と女は古くからの付き合いであった。

しかし、お互いがお互いを思う気持ちが複雑に交差し合いこのような結末を生んだのであった。



「・・・今は・・・・、ただ・・・待ちましょう・・・。あの子の・・・帰りを・・・」


「・・・ああ」


抱きしめあった傍ら、青年は愛しい彼女の映る写真に己の薄い唇を合わす。



しかし、

冷たい口づけ
きっと、それは返ってこない。



何故ならば、その反面で歪んだ笑みを向ける女に彼はまだ気づいていないのだから。

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