月光 | ナノ





如月21『ビビらせんじゃねえよ!』

隼翔21『なんだい、あんなに息巻いてたのに結構君ってビビりなんだねえ〜。まあ、良いや。でも、疑問に思ってるのは本当。揚羽には、悪いけど。でも、ちょっと、不信感は抱いている、かな。だから、その核心を得る為にボクは此処にいる』

如月22『確信を、得るためにか』

隼翔22『…そう。なんなら、君も来るかい?軍を、下手すりゃ、“世界”さえも敵に回してしまうかもしれないアブナイ駆け引き勝負だけどね。』




月光09「…母さんと、父さんがそんな立場にいたなんて…」

如月23「当時からして、かなり危ない賭けだったと思うぜ。でも、あの二人はそれを成し遂げた。揚羽さんの方は、説得にかなりかかったけどな。意思の固い人だったし、
まあでも、一番決定打になったのが…」



SE:紙を広げる


揚羽16『…“新人類統一化計画”だと…』

隼翔23『アイツ…、なんてむごい計画を…』

如月24『ど、どういうことなんだ?その統一計画ってどんな内容なんだ?』

隼翔24『…これは、人類のリセット計画だよ。この世界に生きる人類すべてに“メモリーチップ”を埋め込んで、思考・思想・感情に至るまですべてを、ある特定の人物が管理・操作する。そういう計画だ。…確かに、人間の感情は豊かで繊細で多感だ。だからこそ、その感情や思想を統一すれば、あるいは真の平和は訪れるのかもしれない。でも、それは…』

如月25『そんなもん、もう、人間じゃねえじゃねえかよ…!』

隼翔25『…そうだ。これは、もはや“人間”の考える思惑を超えている。
まさに…“神”か何かの裁きとしか…』

揚羽17『…そんな…、これが…、私たちの信じてきたモノの結末だというのか。
このような、残酷な…真の平和とは、安息とは…こうでもしないと、成せないモノだというのか…』

SE:肩を掴む

隼翔26『いや、違うよ。揚羽。確かに、人間は欲深く罪や業の多い生き物だ。でも、それだけではないはずだ。ボクらは…、“愛すし”“許す”ことが出来る、そしてその失敗を繰り返さないことも…ね、』


揚羽18『隼翔…』


如月26『あー…盛り上がってるとこ、悪いケド。どうすんだ?リーダー。この計画を知っちまった以上、ただ黙ってるなんてこと出来ねえよな?』


隼翔27『勿論。ボク達は、戦おう。これは、ボク達の“未来”を賭けた戦いだ』

如月27『俺たちの…』

揚羽19『未来を、守るために』





月光10「・・・・・未来の、為に」

如月28「ちょうどこの頃だったっけな。二人を頭に仲間を募りだしたのは…んで、今のメンバーもその時知り合った。揚羽と隼翔は軍を脱退し、この地下組織を作った。
そうそう、んで組織の地盤が固まってきた時」

月光11「何かあったの?」

如月29「お前が、生まれたんだ」



SE:歩き回る


如月30『…おい、隼翔。ちょっとは落ち着けよ』

隼翔28『こ、これが落ち着いていられるかい!?もう、ボク今ならちょっとの衝撃でヒットマンに撃たれたかのように絶命する自信ならあるよ!!』

如月31『…もはや、支離滅裂だ。(やれやれ、これで本当に一児の父親になれるのかねえ)』


SE:赤ん坊が生まれる

隼翔29『!!揚羽!!』

SE:駆け出す

如月32『ちょ、今行ったら…』

SE:物を投げつけられる音



隼翔30『ばあー!パパですよ〜』

揚羽20『親ばか丸出しだな…』

如月33『…揚羽も、お疲れ様。体調は大丈夫?』

揚羽21『ああ、問題ない。すぐにでも、フルマラソンが出来るくらいだ』

如月34『それはやめてね(本当に、揚羽ならしそうだし)』

隼翔31『にしても、不思議だなー。こんな、殺伐とした状況下でも子供は生まれるんだ。
ボクらみたいな先の見えない大人がどれだけ頭抱えて四苦八苦してても、必ず次の命は生まれてくる。それは、争いや画策なんかよりよっぽど大切なことだとボクは思うよ』

如月35『隼翔…』


揚羽22『そうだな。そして、せっかく生まれてきたこの子の為にもより良い世界を残してやらねば……む、そうだ。この子の名前はどうしようか?』

隼翔32『ああ、それなら決めてるよ。』

如月36『早いな。ま、生まれる数か月前から浮かれまくりだったもんな』

隼翔33『まあね。そう、それは……如月、君に決めて欲しい』

如月37『ふんふん…って、ええええええ!!?な、なんでオレなんだよ!』

隼翔34『これは、他でもない君に頼みたい事なんだ。これは、この子の生まれる前から決めていた。ボクらの最大の仲間であり、友人である如月、君が、この子の、娘の名前を付けてくれ』

揚羽23『如月、私からも頼む。きっと娘もお前に名づけて貰えると嬉しいだろう。』

如月38『…揚羽まで…、……り』
【後半、呟くが聞こえない】

隼翔35『ん?何??』

如月39『だーーー!!だから、“ヒカリ”!“ヒカリ”だよ、この赤ん坊の名前!』

揚羽24『ヒカリ…』

如月40『けっ、どうせネーミングセンスはねえよ。別に採用しなくてもいいよ』

隼翔36『ヒカリ…、良い名前じゃないか』

揚羽25『ああ。この子も、嬉しそうに笑っている。そうだ…、この子にこれを』

SE:鈴の音

隼翔37『それは、揚羽の家に代々伝わる髪飾り、かい?』

揚羽26『そう、この子に星と、月のご加護を…。この子の、生まれ育つ世界にどうか愛と、幸せが満ちていますように』


如月41『…“月光”』



SE:鈴の音


月光12「…母さん、父さん…」

如月42「お前は、愛されて此処にいる。決して、お前はあの二人に疎まれていたわけじゃないんだ」

月光13「…私ね、ずっと思ってたの。母さんと父さんは私の事が、邪魔になったから。
革命とか改革とかそういう活動に邪魔になったから、傍に置いてくれなくなって。私だけ、地上に一人で、いさせたのかって。“月光”なんて名前も、だんだん嫌いになった。
どれだけ、大事に思ってる。私の事を思って付けてくれた名前だって言っても、全然側にいないじゃないって、だから」

SE:頭を撫でる

如月43「ばかやろ。あの二人は、お前を守りたかったんだ。じゃなきゃ、側に居ずに、
お前を一人になんかするかよ。」

月光14「なら、…もっと、一緒にいた、かったな…。それで、もっと、二人に…」

如月44「…大丈夫だ。きっと、伝わってるよ…。二人にな」

月光15「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ【泣き叫ぶ】」




如月45「…今は、泣け。ずっとオレが此処に居てやるから。

(でも、1つだけ気にかかる事がある…。揚羽と隼翔…
簡単には、やられない二人が…なんで、)」






SE:血の滴る音

チユ02「そ…んな…、んで…」

SE:倒れる


コウタロウ02「…フフフ、全ては、…あの方の崇高なる“計画”の為に…」












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