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軽薄だと罵ればいい、の続き


ああ、ソラちゃんなだけに、空から落っこちて戻ってきてくれればいいのに。 なんて、馬鹿な願望が頭を過る。そんなの、空しくなるだけなのにね。
ふうっと息を吐いて、澄み切った青空を見上げる。

「…何だ、あれ」

ぷかんと浮かんだ大きくて真っ白な雲。その隙間から何かが物凄い勢いで降ってくる。まさか、隕石、とか…?
じいっと見入っている間にも、それはみるみる此方に近付いてくる。危ない、逃げよう。と思った瞬間、きらりと光る銀色を見た。避けようと動いた足に力が入り、何とか留まる。…何てドラマチックな奇跡なのかね、これは。
両手を大きく広げ、情け無いくしゃくしゃの顔から無理矢理笑顔を作る。

「ソラちゃん!こっちこっち!俺のところに飛び込んでおいで!」
「うわわわわわ!」
「ぐへっ」

ドスン、と全身に響く痛み。けれど、抱き留めた重みに安堵する。この声も、すごく久し振り。あまりに懐かしくて、また目頭が熱くなる。
きょとんとして此方を見るソラちゃんの視線に気付いたから、慌てて羽織の袖で拭ったが。

「レイヴン、どうしたの?」
「どうしたの?じゃないわよ!いきなり何も言わずに居なくなって…俺ずっと、心配してたんだから…!」

思わず知らず荒くなる声に、ソラちゃんは大層驚いていた。俺だって、こんな大声が出るなんて思ってもなかったから吃驚したくらいだし。そしてちょっと、ソラちゃんに申し訳無くなった。ソラちゃんだって好きで居なくなった訳じゃないんだし、別れを告げる時間さえ与えられなかったのだろうから…責めちゃ駄目、だわな。伝えたい想いと労わってあげたい想いが鬩ぎ合って、言葉に詰まる。

「ごめんねレイヴン、勝手にいなくなっちゃって」

俺の腕の中にすっぽりとおさまっているソラちゃんが、申し訳なさそうにそう言った。…女の子の上目遣いって、こんなにも殺傷能力があるのね。まあ、愛するこの少女だからこそってのが大きいんだろうけど。あまりにも愛おしくて、そのまま力一杯抱き締める。本当に華奢な子だから、壊れてしまわないかってちょっとひやひやしたけど…うん、俺が安心出来るだけのぬくもりは貰えた。それと、俺の大好きなソラちゃんの甘い香りも。

「ずっと傍にいるって、約束したもんね」
「そうよ〜?おっさん、ソラちゃんがいないと死んじゃうんだから」
「あはは。じゃあ、意地でも離れられないね。今みたいにぎゅってくっついてれば大丈夫かなあ」
「そっ、そうねえ、このままの状態を保てるなら俺様安泰よ!」

そんなことを言いながら、ぎゅうっと俺にしがみつくソラちゃんが可愛くて仕方が無い。こんなにいちゃいちゃしながら帰ったら、青年とかリタっちにぶっ飛ばされるかもね。まあ、それでもいいかって今なら思える。これぞ愛の力!ってね。
離すまい、離れまいと互いに寄り添う。俺、まだまだ此処で生きてたいわ。



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