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ガチン。鍔が鯉口に激しく当たる。しかし、アポカリプスが驚くことはなかった。

『…無理するなよ』
「…なにが?」

手を払って目を瞑る。いつも通りを演ずる、無理した声色。

『こんなこと、お前がやる様なことじゃない。ヒューゴに文句言ってやれよ』
「そうかな。適任だと思うけど」
『…』

薄く目を開いて歩き出す。アポカリプスは、大きな溜息を吐いた。

『お前のそういうとこ、マジで腹立つわ』

これを言うまでに、彼は酷く悩んだ。ただでさえ精神的に弱っている彼女を、更に窮地に立たせるこの一言を。たった一人、彼女の傍にいてやれるアポカリプスがこれを言うことは、まだ幼いこの少女を孤独の奈落へ叩き落とす行為に近い。
それでもアポカリプスは言い放った。自分の知る少女が、どんな顔をするのかを知りたくて。

「あはは、そうだよね。私も、自分が大嫌い」

少女は笑った。それは酷く悲しげな笑顔だった。アポカリプスは戸惑い、そして安堵した。

『…俺はお前のことが嫌いだなんて言ってねえよ。いつもそうやって一人で抱え込んで、無理して笑ってるお前を見てられねえんだよ』

少女は黙ったまま黒鞘の刀を抱き締めた。アポカリプスもまた、黙ったままだった。

「大丈夫。私は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、アース」
『…心配なんかしてねえよ、バーカ』

拭い去れない不安を抱えたまま、アポカリプスはコアクリスタルを閉じた。

「…ごめんね、アース」

一瞬悲しそうに目を瞑って、もう一度目を開く。へらりと笑った少女は、いつも通りにふらふらと歩き出した。


基本的には馬鹿で、なにも考えていたくないタイプのこの人の根底はゆるゆるしてる状態が普通。ゆるいけど、自分の出生のことに関しては酷く冷静に見ている。たまに静かに怒るのも出生関連。決して普段が道化な訳ではないけれど、見る人によってはそう見えてしまうと思う。


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