やっぱり敵わない




何にもない色の世界にいた
息を殺しながら私はこの場所でそんな景色ばかり眺めてた。
でもそれはとうの昔の話。



「おーっす!くるみ!」

朝、校門にさしかかる時に明る声が私を呼びとめた。
その声に振り向くと、声の持ち主はとても笑顔で立っていた。

「おはよう。正臣」

私もその笑顔につられてニコっと返す。
すると正臣は私の手を繋いで「んじゃ、行くか!」と引っ張る。

「…ちょっと!ここ学校なんだけど!!」

もちろん嬉しい。付き合ってるんだし。
でもここは学校で、人もたくさんいるし恥ずかしい。
だから必死に手を振り払おうとするけれど、
正臣の力は強くて振り払えなかった。

「いいじゃん、いいじゃん。見せつけねえとな。」

「その必要ないと思うんだけど。。。」

やっぱり正臣の価値観は昔から全く合わない。
私は色がない人生で彼はたくさんの色で溢れてる人生。
彼の過去なんて知らないけど…でも…
今を見る限り、私とは反対なのが正臣なのだ。

「だって、くるみは可愛いからさ。見せつけとかないと他の奴に取られるだろ」

私が下を向いてると、正臣は下からのぞきこんで頬笑みながら言った。
その時、私は改めて確信する。



やっぱり私は敵わない
(彼の笑顔や言葉たちは)
(私の世界に色をつけてくれるから)



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