時が止まらないせい




時間は止まらない。
その分、二人の距離も止まらない。




寒い季節も終わり気づけば春が来ていた。


「…ああ、そういえば今日から大学生だったね」


臨也がおもむろにつぶやくと、私は今日から
大学生なんだという実感が湧いてくるのだからすごい。


「うん!臨也のおかげだよ」



私がそういうと臨也はコーヒーを啜りながらまたおもむろに口を開いた。



「俺は大したことなんかしてないけどね」


私は居場所がなかった。
両親は他界してひとり池袋の街を歩いていたら
臨也が拾ってくれたのだ。
そして、たくさん可愛がってくれたし学費まで払ってくれた。
その変わり私は臨也の仕事の手伝いをしながらお金を返しながら一緒に生活している。



「いつか絶対に恩返しするから」


「そう、期待してるよくるみ」



そういえば、私が“臨也”と呼ぶようになったのは
つい最近な気がする。
今までは“臨也さん”とさん付けであったのに、
いつしか私は“臨也”と呼び捨てで読んでいたらしい。
それも、時の流れなのかな。



「じゃあさ、」


私がTVのニュースを見ながら考え込んでいると
臨也がTVの電源を切った。


「…何?」


私が不思議そうに問うとぐいっと腕を引っ張られすとんと臨也の腕の中に納まると
臨也は少し鼻で笑って強く私を抱きしめるだけ。


「何?どうしたの?眠いの?」


普段そんなことをされたことがない私は戸惑う。
でも何を聞いても臨也は腕に力を入れるだけ。


「…臨也?」


そして、私が名前を呼ぶと臨也の腕から解放されたから
臨也のほうを向くと少し困ったような顔で言った。


「どうやら俺はくるみが好きでたまらないみたいだよ」


“好き”その言葉が響く。
何も反応できない私に臨也は笑ってもう一度私を抱きしめた。


「臨也」

「…ん?」

「好き、」

「…知ってる」

「大好き」


気づいたら私は泣いていた。
ずっと感じてた距離はいつの間にか縮まっていて
それと同時に心も縮まることができたのかな。


「これが恩返しでいいよ。ずっとふたりでいることが恩返しで。」

「…うん」





時が止まらないせいだね
(キスをする前に彼が)
(小さな声で囁いた)



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