傷は心に染みる





「ねぇ、静雄は本当に私が好き?」

私の問いに静雄の表情は強ばった。

「…なんでそんなこと聞くんだ?」

机の上に置いてある煙草に火をつけ煙が目に染みる。
怒ったサイン。

「だって…静雄は私のこと一度も抱き締めたことがないから」

床にへたりこむように言うと
暫く沈黙が続いた。
ふと、静雄を見ると表情が歪んでいる。
煙草は既に灰皿の中で命耐えていた。
そして切ないような表情になると
静雄の強さらしい強引な腕力で
私は静雄に抱き締められた。

「…痛くねぇか?」

その言葉にはっとした。
静雄は私を傷つけることを恐れているのだ。

「痛くないよ。静雄」




傷は心に染みる
(初めて抱き締めた)
(初めて抱き締めてくれた)
(あの感覚が離れない)



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