久しぶりに通る懐かしい景色が並ぶ道に
なんだか知らないけれど足が進んでいた
そして流れていく景色を感じながら
私は気づいたら思い出したくない場所で立ち止まっていた
そして当たりを見渡すとバスケットボールがひとつ転がっていた
それを取ってシュートする
その感覚は風を切るように気持ちがいいが全てが巻き戻ったかのように
頭の中でぐるぐる回る記憶が気持ち悪い

(なにやってんだろ…帰ろう)

そう心の中で我慢していた息を吐き安堵した時、
あぁ…会っちゃうんだ
再び私の心は息をすることを強張った


「…よお」


私の目の前に現れたのは、あの噂のキセキの世代と言われている青峰大輝
付き合っていた頃からそう呼ばれるようになった彼は
日に日に変わっていった
目には誰も移さずいつも自分を映すそんな姿を見ていて痛々しかった
ただ純粋にバスケを楽しむ彼を見たいだけなのに…
そう何度も思ってはひとりで泣いた夜だってあった


「久しぶりじゃねえか。くるみがここに来るなんてな。」


彼は転がっているバスケットボールを腕に挟みながら私を見る
ちょっとだけ足がすくんだ
何を話したらいいのか分からず、もごもごしてると彼は腕に持っていた
バスケットボールをシュートする
ボールが横切った時にできた風が私の髪の毛をなびかせてゆっくりと元に戻っていく
そして暫く沈黙が続いた


「…来たら悪い?」


流石に沈黙に耐えられず口に出した言葉がこんな言葉で少し後悔した
私は横目で彼を見ると勝ったような笑みをしている
付き合っていた時によく見た彼のその笑み
なんだか付き合っていた頃に戻った気分さえした
嫌な気分、、、そう心に言い聞かせる


「別に」


彼はだるそうに答えると地面に放り投げた鞄を肩に背負う
あ…行っちゃう。
心の中がざわついてくる。
彼は私を振った
ちょうど1年前の夏にこの場所でこの暗闇で彼は私の手を離した
最後に抱きしめてくれた感覚もまだ残ってる
…本当気持ち悪い
追いかけられなかった私が…気持ち悪い


「んじゃ俺帰るわ。気をつけて帰れよ。」


あの日の姿と重なる
一度も振り向いてくれなかった大きな背中
私はまた同じ後悔を繰り返してしまうのだろうか。
そう思った時私の足は前に前に進んでいた
そしてゴールにたどり着くと大きな背中を
小さな腕で一生懸命しがみつく私がいた
彼の顔は見れないがきっとびっくりしているだろう
そりゃそうだ、振った女が未練たらたらしくこんなことをしたら
誰だって驚くし私の場合は1年経った今頃こんなことをしてしまっているのだから
でも久しぶりに聴く彼の鼓動がなぜだか速くなっていた




きっと、今なら
(あの日を巻き戻せる)
(そんな気がしたよ)









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