シューズの擦れた音とバスケットボールが奏でるリズムそして男子たちの声がただ響いてる体育館。
私は今日もその場所に足を止めてしまう。
特に意味はない。ただ、どうしてもいるはずのない人を探してしまうのだ。
そんな私に気づいてか、さつきが私に向かって“ごめんね”とジャスチャーしたのが見えた。
“やっぱり今日も来てないのか”私は『ありがとう』と音無く言うとさつきは少し困ったように笑った。





体育館から屋上までかなりの距離がある。
私は無我夢中で走ってきた。
おかげで足はがくがくだし、以前からある靴ずれは痛いし最悪だ。
到着するや否や、私がさっきまで探していた姿が見えると
自然と嫌な気分も忘れて地声よりすこし大きな声で名前を呼んだ。

「青峰ーっ!」

「あ…くるみか…うっせえよ」

倦怠そうに返事をする青峰。私がずっと探しているやつだ。

「部活、行かなくていいの?」

座っている青峰の隣にゆっくり座りながら聞く。

「…だりぃ」

ひとつ間があいて返ってきた言葉は今まで何度聞いたのだろう。

「そっか」

私は静かに返すとそれ以上何も問わずただ隣で青峰を感じていた。
“青峰が消えてしまいそう”そう心の中で思いながら、ただボーとなんとなく
青峰大輝という存在を消えちゃう前に心に焼き付けておきたかったから。
青峰より強い人ができてまたバスケで戦う楽しさを知ったら青峰は私の隣から

「…いなくなっちゃうから」

心の中で呟いたつもりだった言葉はなぜだか口から出て青峰に届いたらしい。
全くそのつもりはなかったのに…私は「あ、ごめん…気にしないで?」と返すと
青峰はただ寂しそうな顔をして空を見上げると私を見ずに

「…すぐにはいなくなんねえよ。」

と、小さくつぶやいた。




時間が止まってしまえばいいのに
(そしたら青峰はずっと私の隣にいてくれるのに)
(神様、どうか私から彼を連れていかないで)
(私は彼の言葉を聞いたとき密かに願った)



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