「あ、そこに居たんだ…火神くん」
細い声が俺を呼んだ。
振り返ると少し困ったような顔をしたくるみが立っている。
「おう」
俺が返すと少しだけ笑って何か言いたそうに俺を見上げる。
…言いたいことは分かってる。
試合に負けたことそれしかない。
でもくるみはそれに触れないように何も言わず黙っていた。
「…負けたな」
どれだけ沈黙が続いただろう。
そんな沈黙に耐えきれず俺はそう言うと、くるみ下を向いて"そうだね"と小さくつぶやいた
「悔しいね、あんなに火神くん頑張ってたのに…」
そしてそう続ける。
よく見ると瞳に涙を浮かべているのが見えた。
そんなくるみを見たくなくて自分の視界から逸らすように
抱きしめたけど鼻を啜る音は耳に響いてくる。
「…泣くなよ」
それが嫌で身体から引き離して涙を掬うと
くるみは少し困ったような顔で笑った。
掬うのはきみの涙で
(俺のために流す涙は)
(好きになれないから)
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