久しぶりにもらったオフ。
そして久しぶりに会うくるみっちは最後に会った日より髪が少し伸びて、女の子らしくなっていた。
そんなくるみっちを横目に俺はおそるおそる聞く。
付き合い始めてから気になっていたことを…


「…俺ってそんなに頼りないッスかね?」

「…なんで?」


くるみっちは大きく目を見開いて、少し間を開けて不思議そうに疑問を投げ返す。
そういうところは付き合い始めた当初から変わっていない。


「だって、くるみっちは俺にわがままとか相談ごと俺には言わないッスから」


そう答えると、少しばつが悪そうな顔をして二へっと笑う。
くるみっちの一番理解できない点だ。
中学校の時、俺と付き合い始めてからくるみっちはいろんな女の子からいやがらせをうけていた。
身体が傷だらけだった時だってあった。
俺にはなんでかわからなくてくるみっちに聞くと、少しばつが悪そうな顔をして二へって笑うだけ。
後から人から言われて気づいたことで、俺は気付けなかったショックでいっぱいだったけど、
それよりもくるみっちが頼ってくれなかったことが一番ショックだった。
その時と全く変わらない。


「やっぱり俺、頼りないッスよね…俺から聞いといてあれッスけど」


あのときも結局何もしてあげれなかった。
きっと気づいたら俺は何ができたんだろう。別れたりとかしてそうッスね…
出来ることはこれだけ。
…頼りないな。


「…違うよ」


シーンと静まり返った夜道にくるみっちの小さな声が響く。


「…へ?」


逸らしていた目をくるみっちに向けると今にも泣きそうな目をしていた。


「…本当は、相談しようって思ってたの。いやがらせの件もだし高校受験の件も。でも、黄瀬くんバスケやモデルの仕事大変そうだったから、
なんていうか…邪魔したくないし。」


「ごめん、」


今までにないくらいくるみっちは必死に言葉を繋ぐ。
それにどう返していいのかわからなくて、咄嗟に謝るとくるみっちは首を横に振った。


「…違うの。違うんだ。黄瀬くんが悪いわけじゃないよ?黄瀬くんは絶対にどんなに部活や仕事でいそがしくても、
相談に乗ってくれる。でも私がしなかったのは…怖かったから。」


「…なんでッスか」


今まで歩いていた足が自然と二人同時に止まる。
街頭の明かりと自販機の明かりしかない歩道は少し不気味だった。


「だって、いやがらせ受けてるとか絶対に黄瀬くん自分のせいだって思って私に別れ告げると思ったんだ。優しいから黄瀬くんは。」


"優しいから"っていう言葉が胸に引っかかる。くるみっち、俺優しくなんかないッスよ。
でも、俺のことくるみっちはたくさん知ってるんだって改めて思った。
知らないのは俺だけ。くるみっちの知らない部分がたくさんあるのは俺だけなんだ。



「…くるみっち、今度からは頼ってほしいッス。どんなことがあっても俺はくるみっちを手放さないッスから。」



「…うん。私のがごめんね。黄瀬くん。これからはいっぱい頼るからっ…」



今までくるみっちの目に溜まっていた涙が落ちる。
俺が涙を指で拭うとまた二へっと笑う。
そして気づいたらくるみっちのことを力強く抱きしめていた。
俺の頬にも涙が伝うのがわかって情けないなあ…と心の中で思った。



頼らないのは彼女の優しさ



(…なーんで黄瀬くんまで泣いてるかなあ)
(…気のせいッスよ。泣いてないッス)
(どーだか)




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