突然ですが審神者になりました2

 審神者とは何か。
まず"審神者"という文字がさにわと読むことすら知らなかった。
これは決して私がアホなわけじゃない。
それよりも時の政府から言われた審神者の仕事は過去改変をする悪い奴らをやつけることだった。
それには何より、付喪神である刀を増やして、悪いやつらと戦うことだったが、問題が生じた。


「刀ってどうやって増やすの、骨喰」
「鍛刀するか、見つけてくるかだ」
「なんかすごいデジャブを感じるんだけど。前にこんなかんじのゲームやったことある気がする」


 縁側に寝転びながら、スマホを起動させる。
電波がないが、親切にも時の政府の仕送りの中に充電器があった。
電波のない、しかも時が停滞したこの場所でのスマホの機能といえばメモ帳と目覚ましとカメラぐらいだ。一気にポンコツ感が増した。


「えっと鍛刀するには依頼札を出して、資材を調合して……ダメだ頭が痛くなってきた」


 ちらりと骨喰を盗み見れば、冷ややかな瞳。
一応私が主ということで骨喰と敬称なしに呼ばせてもらっているけれど、この主君を見下した目。
スマホと同様に主人もポンコツとはな、なんて心の声が聞こえてきちゃう。
このポンコツ感を拭うために私は重い腰を上げた。


「とりあえず、鍛刀しにいこうか」
「……」
「そういうときって、あい、仕った!とかそういうのないの?」
「ない」
「オーケー、わかった、もう挫けないよ私は」


 いざ、鍛刀をしてみようとしたが、正直わからない。
色々と配分があるらしく審神者トリセツ(仮)には「自分の欲しい刀に合わせてレシピを試してね☆」とあったけれど、刀なんて何が何だかわからない。
包丁って刀じゃなかったんだね〜とボケてみたら骨喰にため息をつかれたので折れない心が折れそうになった。


「えっと、玉鋼はこれぐらいで、それでもってえーっと……なんだこれお菓子作り?量とかもう適当でいいや。適当で出来たやつほどいいものが出来るとかいうしね!」


あるものを全部放り込んで鍛刀の妖精さんにお願いする。
すると、その妖精さんから時間が書かれた板を渡された。


「えっと待ち時間が一時間半?アトラクションの待ち時間並みじゃん。ファストパスないの?」


すると妖精さんがなにやら壁にかけてあった札を指さした。
言葉をしゃべらないので何をしたいのかさっぱりわからないけれど、とりあえず君頭いいね〜と適当に褒めて親指を立てておいた。
妖精さんはにこっと笑顔を浮かべてその札を炎の中に投げた。
その札が燃えた瞬間、もわもわとした煙があたり一面に漂い、私は思わず口元に自分の服の袖を当てた。


「ちょっとこれやばいやつなんじゃないの!?」
「新たな刀が来た」
「なんだって!?ってなんか光ってる!」


 まばゆい光に目を閉じた。
そして光が収まったころに瞼を開けるとそこにはひらひらと桜の花びらが舞い散り、先ほどまで誰もいなかったところに一人の青年がいた。
私はその姿を見て、目玉が飛び出すほど目を見開いた。


「……大倶利伽羅だ。別に語ることはない。慣れ合う気は「ええええ!?うそでしょ!?」」


 私は大倶利伽羅といった青年に近づいて、身体や顔をぺちぺちとたたいた。
それもそのはず。
変な甲冑とか除けば見た目がまんま私の彼氏だったからだ。


「ほんと?夢?もしかして迎えに来てくれたの!?」
「触るな」
「貴方も拒絶系男子なのね…そういうところも彼氏と一緒」
「……」
「うわーその冷たい瞳もほんとそっくり」
「用が無いなら放っておいてくれ」
「そんなこと言われてもこんなにも彼氏と似ている人を目の前にして放っておけるわけなんて……そういえば今喧嘩中だった」


 この目の前の人物は彼氏じゃないとわかっていても、心が揺れてしまう。
唇を噛みしめながら元の世界に恋しくなっている私に突き刺さる第二の氷視線。


「骨喰どうしたの」
「早く鍛刀を」
「はい、かしこまりました」


 気が付けば大倶利伽羅と名乗った似非彼氏は壁に背中をもたれ掛け、周囲を拒絶するオーラを出していた。
確かに、この二人と一緒にいたら一人で脳内会話しそうだ。
妖精さんのジェスチャーによると、あと4本くらいはいけるとのことだ。
また女の勘という都合の良い適当な言葉を使って資材を放り込み、完成を待つことにした。

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 手っ取り早くファストパスの札を使いたかったけれどどうやら数に制限があるようで、屋敷の居間で寝転んでごろごろしながら待っていた。
そして完成した刀と対面したけど、私はもう何がきても驚かない。
彼氏にそっくりな刀が現れたのだから、夢を見ているかのような都合のよいことだって起こると思っていた。


「はい、じゃあ骨喰パイセンのために左から自己紹介お願いします」
「…パイセン?」
「とりあえず、骨喰の疑問はほっといて、はい、大……だい……」
「大倶利伽羅だ」
「そうそう、彼は大倶利伽羅です」
「……」
「せめてほら、よろしくとかさ…」
「慣れあうつもりはない」
「やめてよ!そういうところまで彼氏に似なくていいからさ!そのせいでまじ合コンとか空気やばかったんだからね!まあこいつは置いといて、はい次」
「へし切長谷部、と言います。主命とあらば、何でもこなしますよ。」
「よろしくね、すごい忠誠心だね。ちなみに君は私のバイト先の先輩にそっくりだよ。イケメンだけどちょっと変態っぽいよねとか話してたのが懐かしい」
「へっ変態……?」
「はい、次の方どうぞ」
「ぼくは、今剣! よしつねこうのまもりがたななんですよ! どうだ、すごいでしょう!」
「可愛いね!あとでお団子一緒に食べようね!」
「わーい!あるじさまだいすきー!」
「友達の弟に似てる少年を餌付けするってなんだか犯罪者みたいな心境になるね。はい次」
「僕は、燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ。……うーん、やっぱり格好つかないな」
「サークルの先輩にそっくりすぎて何だかもうドッキリでも仕掛けられてるみたいだよ」
「ははは、よろしくね、主」
「そのイケメンな笑顔もそっくりで何度か乗り換えたくなったよ、まあいいや、はい次」
「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」
「あー、やっぱり拗らせてるのきたか!同じ学科でそっくりな人いたけどそっちも拗らせてたよ!」
「……ふん。所詮は写しとか思っているんだろう?」
「いやそんなことないよ。うん、ほら髪の毛とかさらさらしてて綺麗だね」
「綺麗とか、言うな」
「あっはい、ごめんなさい。とりあえずこれから6人で頑張っていこうねー」
「主様、僭越ながら申し上げますが刀装も作成しなければなりません」
「えっほんとに?」
「…」
「…」
「はい、そこの拒絶系男子二人、ため息つかない」
「あるじさま、おだんごはー」
「うん、わかった。買ってくるね!」

 今剣のためにお団子を買ってこように加え、もう色々と面倒くさいのでこの場から逃げ出したいという思いを胸に立ち上がったが即座に膝をぴしゃりとたたかれる。


「いった!」
「刀装」
「骨喰パイセン、ここは何とか見逃しては…」
「駄目だ」
「ですよねー」

 てへへと後頭部に手を当ててあざとく笑ってみたけれど、そこで「この☆」なんてツッコミが飛んでくるはずがなく、その後私は月が旋毛の上に上る頃まで強制的に刀装を作っていたのだった。





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