――どちらでもいい、と言えないものが、僕にもできたのかと知ったとき。


 回遊するように生きていたかった。選択にしがみつかず、境界線を逸脱せず。必要以上に自己に固執もせず、人に期待も寄せない。
 難しいことではなかった。望みは叶わないくらいが、当たり前だと知っていたから。願ったことがそのまま手に入る世界などではない。それさえひとつ忘れなければ、傷つかないで向かい風に乗りたいと思うような無謀など起こさない。そう思ってきたのに。
「好きだよ、アカリ。君が今考えてるのと、きっと違う意味でね」
「え……」
「君の恋人になりたいって、言ってるんだ。……返事は?」
 眼前の少女の眸の中で吹き荒れる、青天の霹靂が目に痛い。こんな形で誰かとの線引きを逸脱する日が来るなど、考えてもみなかった。ましてそれが、君だなんて。いつもならそう言っているところだが、今は違う。
 どちらでもいい、と言えない。肯定でない答えなら、いっそこの告白もろとも、そこに投げ出してほしい。そう思えるほどに、期待をしてしまっている。彼女の、僕を映しては揺れる眼差しに。


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