―――隣に君がいないことを、退屈だ、と感じたとき。
特別なことは何もしたことがなかった。二、三日に一度、買い物へ来たついでに僕の家へ寄って寛いでいく彼女に、紅茶の一杯と昨晩のスープの残りを並べて出すくらいはしたけれど。それだって毎回じゃない。
「……」
他愛ない、あってもなくても変わらないBGMのようなものだった。彼女との時間、彼女との会話、その声、すべて。近頃は煩わしく思うこともなくなっていたけれど、ただ慣れただけ。そう思っていたのに。
「……暇」
どうやら本当はもう一歩、先へ進んでいたらしい。飲みかけた紅茶に映る自分の呆れたような片目に、仕方ないだろう、気づいてしまったんだよと心の中で一人、居直った。
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