―――その告白を待とう、と思ったとき。


 愛されていることに気づくのは時間がかからなかったが、それを荷物に感じない理由に気づくのは少し遅くなった。クレアさん、あのさ、あのさ、と。彼ばかりが必死になるから、何も察していないふりをするのに気が向いていて、肝心なことだけ最後まで考えてもいなかったのだ。
「あ……!やあ、クレアさん。えっと、さ」
「おはよう、グレイ。なあに」
「ええと……、あの。俺も、こっち行くところだったんだ。途中まで、一緒に行ってもいいかな」
 知らないふりをすることが、どうしてこんなに楽しいのか、ということ。待ち人の足音が聞こえていながら背中を向けて、肩を叩かれるのを待っているみたいに。
 つまるところ、私は自分でも無意識のうちに、彼に対してそんな期待をしていたらしい。広場から飛び出してきたくせに些細な偶然を装う彼のポーカーフェイスが、くだらなくて愛しくて、いいよと頷いてしまった。


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