革命選抜っ子







「殺されそうって思った瞬間かあ」
 革命選抜というチームを組んでから、自然と南沢、貴志部、雪村の取り合わせで話す事が増えた。
 三人はスポーツドリンクを片手に休憩時間を過ごしていた。
 南沢は、古い記憶を探ってみると、思い当たる事が有ったのでそれを話してみた。
「俺は、オープンおじさんに追いかけられたときかな」
「あの、オープンおじさんって、何ですか?」
 貴志部が問えば、南沢はオープンおじさんとは、ロングコートでもって身を包み、人が現れるとそれを脱ぎ、裸を露出し、性的興奮を感じる人間で、主に女性などを狙って局部を晒したりするという事を説明した。
「なるほど、露出狂の事だったんですね」
「そうそう、まあ、追いかけられるだけなら平気だったんだけど……そいつ、銃を持ってたんだよ」
「は、アンタ大丈夫だったの?」
 雪村が少しだけ心配そうに言う。
「勿論。暗かったから本物と勘違いしただけで、実際にはただの水鉄砲だったのさ。ただ」
「ただ?」
「その男が、オジサンのミルクが詰まった水鉄砲で遊ぼうって言った瞬間に、中身が精液だって分かって、流石に引いた」
 うわあ、と雪村が声を漏らす。貴志部も女の子の様に手を口元に宛てたが、すぐに空気を変えようと自分の話をした。
「俺は、アフロディ監督が現れたときですね。性別も不詳なうえに、神々しかったものだから、もう、天に召されるかと……」
 お前らしい、と聞き手になった二人が和やかに笑う。
「二人は笑ってるけど、本当に凄かったんですよ? 殺されると言うよりは、お迎えが来たような感覚だったけど」
 死の危険を感じたのは確かだよ、と貴志部は付け加えた。
「雪村は?」
 話を終えた貴志部は雪村に次を促せば、それに従って雪村も口を開いた。
「俺は、春になるといっつも思う」
「春?」
「お年寄りとかがさ、春になると厚い氷を割るために鶴嘴とか、鉄のスコップだとかを持ち歩いてうろうろしてるんだよ。そんな道端を手ぶらで歩くと、武器を持った人達が突然襲いかかってくるような気がする」
「殺されそうな瞬間って言うか、それは被害妄想だな」
 南沢が突っ込みを入れると、雪村も、まあそうなんだけど、と返した。
「でも、それを除いても春は冬より危なかったりするんだ。雪が溶けてきて、隠れていたコンクリートが剥き出しになってくる。でも、氷は陽射しに照らされてぬらぬらと輝きながら残ってる。もし、氷のうえで滑って、コンクリートに頭を打ち付けたら……とか考えると、結構怖いんだからな」
「と言うことは、氷に殺されない為に、人々は鶴嘴で立ち向かうんだな」
 南沢が言った。すると、貴志部も声を出す。
「そしたら、人々に殺されないために氷は人々を滑らせるんでしょうか」
「春は、殺し合いの季節って訳だ」
 再び、南沢が言葉を返した。
「朝起きると、外からは雪が崩れたり、雪を踏んだり、氷を割る音が聞こえるんだ。ガツンガツンって、工事現場か戦場としか思えねえよ」
「じゃあ、雪村も殺す側に回れば良いんじゃない? そうすれば何も気にならないって」
「嫌だ。雪掻き大変だもん」
「そんなんだから両方に殺されるんだよ」
 貴志部が笑いながら言った。




2012/03/11



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