・メリアさんは、「深夜の病院」で登場人物が「電話する」、「コーヒー」という単語を使ったお話を考えて下さい。
・上記の診断結果から書いてみました。








 やけに長い呼び出し音が漸く途切れ、拓人は通話をする事に成功した。
「もしもし、寝てた、なんて事、無いですよね」
「……マナーモードにしてたから」
「嘘ばっかり」
 拓人は本体と受話器を繋ぐコードを指先でくるくると遊ばせていた。左手には、紅茶派の拓人にしては珍しく、コーヒーが注がれたマグカップを握っていた。
「見舞いに行けなくて悪かったな」
「月山から病院まで来るのが難しい事は分かっていますよ。だから、そういう言葉が聞きたい訳では有りません。ただ、メールとか、それくらいくれたって良かったのに」
 そう言えば、相手は回答に詰まった様だった。少しの沈黙のあと、苦し紛れに言葉が紡がれた。
「昔、病院では携帯を使っちゃいけないって聞いてたから控えたんだ」
 拓人が入院を強いられた理由は、足の怪我であって、精密な機器を必要とする物では無いと言うのに、無理がある。
 大体にして、現在では携帯の使用を認めている病院が多数を占めている。
 顔が見えずとも、南沢が電話を切りたがっている事が感じ取れたので、拓人は、さっさと本題に入る事にした。
「南沢さん、俺が倒れて、嬉しかったですか」
 電話越しに、息を呑む音が聞こえた。
「まさか、どうして?」
「だって、今の南沢さん、とても幸せそう。兵頭さん、でしたっけ。すごく南沢さんを大切にしてくれているんですね」
「それがどうかしたのか」
「どうかした、だなんて、南沢さん、俺が、邪魔になったんでしょう。兵頭さんとかいう人が好きになったから、もう要らないんでしょう。だから、南沢さん、俺が倒れて嬉しかったでしょう? 死んだと、思ったでしょう?」
 言い切った。さて、南沢さんはどのように返してくれるだろう。そんな事ないよって、言ってくれるだろうか。
 南沢は依然、黙ったままである。
 拓人は南沢の素敵な返事を期待しながら待っていた。
 けれども、南沢は、拓人を裏切り、無情な一言を告げたのだ。
「神童、眠いから寝るわ」
「え、みな、」
 ガチャン、ツー、ツー、ツー。
 話は、一方的に終わってしまった。静寂を妨害するかの様に、機械音だけが小さく鳴いていた。
 拓人はそうっと受話器を置いた。
 そうして、もう一度受話器を取ると、先程とは別の番号を押していく。電話は、すぐに繋がった。
「明日、車を一台用意してくれないか。適当な物で良い。使い捨てに出来るドライバーも。そう、金を積めば、何だってするような……、ああ、そいつで良いよ。俺のところに届けて欲しい人がいるんだ。生死は、問わないから」
 拓人は夜の空気に冷えたコーヒーを、口に含んだ。



 南沢は疲れていた。
 雷門にいた頃から、拓人の勘違いには迷惑していたのである。拓人は、何故だか自分と付き合っていると思い込んでいる節が有った。
 転校をして、それも治まったと思っていたのだけれど、昨夜の電話でそうでは無いという事を実感した。
 よく眠れないまま、南沢は学校へと歩いていた。
 前を見ると、兵頭の姿がある事に気付く。
「兵頭!」
 遠くに投げ掛けるように名前を呼べば、兵頭が振り向いた。けれど、こちらを見た兵頭は、急に形相を変えてしまう。
 兵頭が何かを叫んだ。
 残念ながら、南沢に起こる悲劇は、もう、確定しているのだけれど。







2012/02/20






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