太陽に呑まれる瞬間、天馬と抱き合いながら死にたいよ!!
 太陽は目を爛々と光らせながらそう言った。
「やだなあ太陽。小学生のときに習ったでしょ。そうなる頃には俺達とっくに生きていないよ」
「分からないさ。必ずしも太陽が50億年後に地球を溶かしてくれるとは限らない。もしかしたら、太陽が急に肥大を始めて、地球を飲み込んでしまうかもしれない」
「少なくとも、俺達が生きているうちは考えられない事だね」
 天馬は、太陽が"太陽"を連呼するだなんて、何だか可笑しな感じがした。おまけに太陽が"太陽"に焼かれるだなんて、とっても面白い。
「ああ、どうして僕、50億年後に生まれて来なかったのかなあ! そうしたら灼熱の太陽を受け止めて、地球がドロドロに溶かされて、太陽が光を無くした星屑になるまで見届けてやるのに!」
「50億年後って言うと、地球が亡くなる前に人類が滅亡しているんじゃあないかな」
「人類なんてどうでもいいさ。僕と、天馬だけ要れば良いんだ。二人っきりの地球で太陽を背にして、サッカーをするんだ。きっとそれは、とても僕達を熱くさせてくれる。逆に太陽を焼いちゃうかもしれないね」
――――世界の終わりに立ち会えるだなんて、とてつもなく光栄な事だよ。なにせ、人類を岩と金属いっぱいに蓄えてきた地球が壊れる瞬間なんだからね。
 何が起こっても廻る地球の回転が止まる瞬間。自転も公転も許されざる瞬間。生命を掌で転がしてきた地球が太陽に掌握される瞬間。地球ごと太陽に捻り潰されるのはとても気分が良いに違いない。
 その時、天馬を見詰めながらじくじく、じわじわと、少しずつ、指先から熱に侵されていけたら素敵じゃないか。
 サッカーをしながらも良いけれど、欲を言えば抱き合いながらが悦い。抱き合って、縺れ合い、太陽に負けないくらいの猛烈な愛でも囁きながら、二人の境目が無くなっていくのを感じながら、ああ、本当の意味で一つになれたねだなんて言って、熔接されていくんだ。――――
「天馬、二人で太陽の一等熱い内部に向かって飛び込んでいくだなんてどうだろう。君と僕の婚前旅行先だよ。ね、いいでしょう」
 天馬は想像をして見る。
 暗い暗い、果てのない宇宙で、一際燃え盛る太陽を見付ける。天馬と太陽は、その炎に魅了され、欲深くも近付いていくのだ。
 恍惚とした表情で瞳の中に痛いくらいの熱さを映す。二人はこう思う筈だ。
 太陽になりたい!!!!
 天馬と太陽は魅せられたままに光の恒星に飛び込むのである。そのとき、心は清々しい程に無垢なのだ。
 それは、とても素晴らしい事のように思えた。







2012/02/17



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -