「ちゅーかさ、片栗粉Xって知ってる? 簡単に言ってしまえばオナホールなんだけどさ。俺ら中学生はそういう道具を入手するのが難しいっしょ? でも、この片栗粉Xは身近なものですぐ作れちゃうってワケ」
 そう教えてくれたのは浜野だった。
 興味が湧いた俺は浜野から片栗粉Xの作り方を教わり、箇条書きのメモをとった。
 早速、今夜、試してみようと思ったのだ。





 深夜の道端で南沢さんと遭遇した。
 俺は例の片栗粉Xを作る為にコンビニで材料を買い揃えていた。買い揃えるといっても、片栗粉一袋のみだった訳だけれど。
 会計を済ませた俺は自動ドアを潜ったところで街灯に照らされた南沢さんを見付けた。見付けたのだが、見付けなければ良かったのかもしれない。
 見間違えた。そういう事にしよう。
 折角俺がそう決めたと言うのに、南沢さんはセーラー服を身に纏い、なんの感慨もなさそうに俺をみた。
「倉間、バレバレ」
「……やっぱり?」
 あれほど、不躾なまでに視線を送っていれば南沢さんが気付かない訳が無かった。
「ばれたなら仕方ないな。俺、こういう趣味があるんだ。女になりたいとかじゃあないけど、時々女物の服が着たくてたまらなくなるんだ」
「南沢さん、変態だったんですか……」
「変態じゃない人間なんているものか」
「そうですけど、そうなんですけど、南沢さんが女装癖だったなんて、喜んでいいのか悲しんでいいのか全く分からねえ……複雑すぎます」
 南沢さんの生足が見れて嬉しいのか、憧れの先輩が女装癖だった事を嘆きたいのか、俺は自分の心を判断できなかった。
 紺色の襟に白いライン。赤いスカーフ。綺麗に整ったプリーツスカート。そこから覗く脚は明らかに男の物だったけれど、細い上に体毛も無かったので嫌悪感は湧かなかった。どう見たって男なのに、悔しいくらいに南沢さんはセーラー服を着こなしていた。
「とりあえず、俺、帰ります」
「そっか、もう1時過ぎるしな。夜道には気を付けろよ。おやすみ倉間」
「先輩も、そんな格好だと危ないですよ」
「いや、それをちょっと期待してるから心配するな」
「ええー……」
 本格的に南沢さんは変態だった。





 俺は家につくと、台所に立ち、袋から片栗粉を取り出した。
 予め乾かしておいた空のペットボトルをカッターで15センチ程の長さに切り、ペン立て、あるいは長いコップのような形に整えた。
 それから計量カップを取り出すとその中に片栗粉と水を入れて菜箸で混ぜる。玉が綺麗に無くなり、頃合いだと思った俺は中身をペットボトルに移し替える。
 そうして液体の入ったペットボトルをレンジにかける。レンジの中でくるくる回る姿を見飽きた所で、レンジはチンッと音を立てた。俺は鍋掴みのミトンで高温になったペットボトルを掴み出して真ん中に定規を挿した。
 それをそのまま冷蔵庫に入れた所で俺は要約一息つく事が出来た。
 浜野から貰ったメモを見るとペットボトルを冷やすのにはそれなりの時間を要するらしい。





 一時間後、冷蔵庫からペットボトルを取り出すと俺は挿していた定規を円を描くようにして引き抜いた。
 更に、ペットボトルの底をとんとんと叩いてつるんとした物体を外に出してやった。
「……おお」
 正しく、片栗粉Xの完成だった。
 ふにふにとしていながら、微量ながら弾力がある。円筒状の筆箱に孔が空いたような形だった。実に面白い。
 折角なので今からそれを使用してみる事にした。時計の針はすでに2を通り越していたが、目は冴えていたし、今すぐ使ってみたいという気持ちが勝った。
 ペットボトルなどのゴミを手早く片付けてしまうと俺は直ぐ様自室に籠った。
 壁に背をつけて、ベッドに座り、俺はズボンのチャックに手をかけた。


 片栗粉Xは確かに、未知の快感を俺に届けてくれた。
 そうして、どういう訳だか、その時、頭の中はセーラー服を着た南沢さんでいっぱいだった。射精を終えてから南沢さんをオカズに使ってしまった事への罪悪感がどっと襲ってきた。
 多分、二度と片栗粉Xは使わない。









2012/02/06



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