∴閑話01:隙間/大和守安定
暗い場所が怖い、だとか、夜中にちょっとだけ開いてる戸の隙間が怖い…、っていう経験は、案外誰にでもあると思うんだよね。
『いきなりどうしたの?』って。
…笑ってるけど、主もたまにそういう事あるでしょ?
僕は付喪神だけど、中途半端に空いた障子とか押し入れの隙間なんかはちょっと苦手だし。
…他に怖いもの?
んー…そうだな。
夜中の物音とか、お化けとかはあんまり恐いって感じしないけど、やっぱり隙間だけはどうやっても駄目かな。
主は隙間平気なの?
『全然大丈夫!』…って、すごいね。
僕が隙間を嫌いだと思うのは、その…何て言うかな。
ぽっかり口を開けたそこに興味本位で指を突っ込んだり、うっかり覗いたりしたら最後、って感じがするから…かな。
どこか知らない場所に引き込まれて、二度と帰って来られなくなる、みたいな。
あ、ごめん。
ちょっと怖い例えだったかな。
まあ、結論から言うと、刀だろうと人だろうと怖い物は怖いし、苦手な物は苦手って事じゃないかな…って。
大丈夫?震えてるみたいだけど。
え『寒い、』…?
うん、言われてみれば、そうかも。
でも、10月になったばっかりなのに。
おかしいな…。
それよりさ、もうちょっと僕の方に来ない?
え…『何で?』って。
主は今寒いんだよね?
こう、何て言うかな。
くっついてた方が、いくらかあったかくなると思ったんだけど。
うん。
ついでに、そこの戸もちゃんと閉めとこうか。
変なのが入って来たら困るからね。
それから、そこの襖の穴も早いうちに塞いでおかないとね。
…分かってるとは思うけど、覗いたりしない方が身のためだよ?
それにしても寒いな…気持ち悪いくらい。
……ん?
主も気付いちゃった?
うん、そうだね。
───さっきから、覗かれてるみたいだ。
怖い?
『こんなじゃ審神者部屋に一人で帰れないよ…、』か。
なら、今夜は僕の所に泊まっていきなよ。
うん。大丈夫、気にしないで。
今日、あいつは遠征で居ないから。
主に何かあったら大変だし、僕は慣れてるから全然平気だけど…。
…どうせ寒いんだから、一緒の布団に寝ちゃおうか。
あっ、今動いたね。
すごく震えてるのが影で分かるし、相当怒ってそうだけど…。
うん。
僕もあの影は見覚えあるよ。
長谷部と巴形…間違いないね。
多分、主がいるから部屋の中までずかずか踏み込んできたりはしないと思うけど。
とりあえず、何か面白いからもっと惚気ておく?
───そうは言っても、うちは長谷部も巴形もまだいないはずなのに。
あそこに見えてる長谷部と巴形は、一体どこから来たんだろうね。
ねえ…主もそう思わない?
end.
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