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▼ 火男、割烹、晴れのち祝言/鋼鐵塚蛍

*捏造、想像が多分に含まれますので、閲覧注意。
*名前変換を利用しない場合、名前部分の表記は全て『瑠音』で統一されます。


朝起きたらすぐに布団を片して割烹着とおかめのお面を身につけ、厨に立つ。

これが習慣になったのは、ずっとずっと前の事だったような気がする。


竃へ薪を幾つか入れ、マッチを擦って。

火を巡らす片手間に勝手口から外を眺ると、向こうのタタラ場から煙が吹き上がっているのが見えた。


ここへ来た時は、それがあんまりにも珍しかったもので。
勝手口から半分身を乗り出すようにして丸一日も眺めていたら、誰が気を利かせてくれたものか。

次の日の厨には、まだ五つだった自分にぴったりの小さな腰掛けが置いてあったものだから…冗談抜きで飛び上がらんばかりに喜んだ後、すぐ腰掛けに座り、来る日も来る日もここでタタラ場を見ていたものだった。


昔の事を思い起こしながら鍋に水を入れて竃に乗せ、包丁とまな板を取り出して昨日貰ったばかりの蕪を刻む。


まわりの大人から見れば、当時の自分は大分変わった子どものように見えていたろうが、今まで生きてきた中で『変わっている』と言われた回数は、もうよく覚えていない。

思えば、自分がここに貰われてくる事となったのも、他の子と比べて変わっているせいであったのだが。
正直なところ、ここには自分よりかよっぽど変わっている人が多いと思う。


短気に頑固。
凝り性な上、おまけに癇癪持ち。

…と、まあ。
字面だけ見れば良い所なしのように思えるが、人間誰しも完璧な者はいないのだから、むしろこれぐらいが丁度いいとさえ思うくらいだ。


今度は米を研ぎ、釜へ入れてもう片方の竃へ乗せ。
続いて、鍋の中へ刻んだ蕪を入れて煮る。


鬼殺しを専門とする隊士の刀を作るこの里へ『変わり者』と疎まれた自分が貰われてきて、もっと『変わり者』である素敵で人情深い大人達に囲まれて育った。

実際には、こうなるまでにそりゃあもう色々あったにはあったが。

当事者でない者から見れば、他人の人生なぞ所詮はただの絵巻物の切れ端か何かとして片付けられる程度には価値のない事なんだから、尚語るのはかえって野暮というもの。


あれやこれやを割愛し。
今日も今日とて、時々面倒くさくもあるけど大好きな人達の為、別段頼まれてもいなくてもご飯を作る。

どんな人だって、美味しい物を口にする時だけはいつもよりほんの少し素直になれるから。

料理を味わう一瞬の隙。
『変わっている』中に見え隠れする、老若男女問わぬ無邪気さが、病みつきになるくらい堪らなく愛おしくて───。


鼻歌でも出そうなくらい良い気持ちのまま、今度は七輪を取り出し、網の上へ目刺しを乗せて竃の火を少し拝借。

焦げないように箸でひっくり返しながら、同時に釜の方も見て。


「おはよう、瑠音。朝から随分機嫌良さそうだなぁ、」


突如背後から放られた軽く滑らかな声に体を震わせるも、もう遅い。

振り向いた先には、今の家族にあたる人の一人…兄が火男の面を付けて立っていた。


もしかしなくとも、その面の下の顔はにんまりと笑っていて。
声の調子から察するに、若干こちらを揶揄っているようでもあり、じんわりとした恥ずかしさが滲み出る。


「なんや、兄さんだったんか。おはようさんです…それはそうと、後ろから急に驚かさんといて下さいな。もぅ…うちが怪我でもしたら、明日からのご飯どないするつもりですの。」


そうは言ったものの、兄は特に気にする風でもなくこちらへやって来て。
手元を覗き込むなり、子どものような歓声を上げる。


「お、やった…朝飯は目刺しと蕪の味噌汁だな!あ、今日の俺の分の米は」

「…はいはい、分かっとりますよ。好物の日は『ご飯は茶碗に山盛り』が、兄さん流やさかい。」

「そうそ!やっぱ、朝から美味い物食うと元気出るからなぁ!それで頼むわ、」

「ふふ…誉めても何も出ませんえ?今日はお弁当、どないしはります?」


流れのまま問い掛ければ、兄はしばらく考え込み。

今日は仕事が立て込んでるからおにぎり二つと茶だけで云々…なぞと言い出すが。


「そういや、昨日な…風呂でばったり鋼鐵塚と出会してさ。いつもの調子で『そろそろみたらし団子が食いたい…、』とか言ってたから、何本か作って持ってってやってくれよ。」


何でもないように言われたが、つい眉間に皺が寄ってしまう。


「もう、蛍はんたら…またですの。『みたらし団子ばっか食べはるんはあきません、』って。うち、これでも団子出す度お話ししとるんですえ?ほんと、何遍言うたら分かってもらえるんやろか…。」

「そう言うなよ。後にも先にも、あいつが大喜びで食うみたらし団子ってのは、お前の作ったのだけなんだろうしさ。」

「気のせいとちゃうん。あの人、みたらし団子なら何処のでもみーんな美味しそうに食べはりますし。本当にそうやったとしたって、うちは別になーんも細工せんと普通に作っとるだけやさかい。特別気に入るとこなんかあるようには思われへんのですけど、」

「何だ…存外鈍いな。美味いのは勿論だけど、あいつはお前の作った物だから良いんだよ、きっと。」

「……そないですか?」


男の人いうんは、よう分からへんもんやね…。

面の下へ言葉を隠すようにそう言って、ひとまず目刺しを皿へ上げる。


間もなく、家族全員が起き出す頃合だ。
祈るような気持ちで竃へ近寄り、釜の蓋を開けた瞬間に、炊きたてのご飯の良い香りが広がる。

そういえば、結局団子を作る羽目になってしまったものの、肝心の白玉粉はあったろうか。
団子粉で作るとすぐ固くなってしまうから、と。

頭の片隅で思いつつ、手早くお櫃へ米を移して、朝餉の支度へ取りかかった。


***


家族が仕事へ行くのを見送り、家の用事をすっかり片付けてしまってから、玄関口へ『留守にしております』と書き付けた板を立てかけ、小さな荷物を持ってお使いに出る。

これも、もう幾分前からの習慣であった。


硫黄と鉄の匂いを感じながら、鍛刀場のある方角へ足を向け…といっても、鍛刀場そのものは女人禁制であるため、男性達が休憩に入る頃合を見計らい、一歩手前の休憩所へ降りてくる合わせて差し入れを持っていくわけなのだが。

この時間帯は自分と同じように、お弁当を届けに休憩所へ向かう女性としばしば一緒になる。


自分と同様におかめの面を被った彼女らと挨拶を交わし、おしゃべりをしつつ歩いていく最中。


「あら。そこにいるの、瑠音ちゃんじゃない…?」


聞き覚えのある声に振り向けば、そこにはいつも懇意にしてくれる女性の姿があった。


「こんにちは、姐さん。」


親しみを込めた呼び名を口にし、そちらへ近寄っていくと、彼女の手元にも弁当包みがあるのが分かった。


「姐さんは、これから旦那はんの所へ行きはるんですか?」

「勿論そうよ。そういう瑠音ちゃんは、今日も鋼鐵塚さんの所に行くんでしょ?お弁当の他にお団子も持ってってあげるなんて…何だか、新婚さんみたいで可愛いわ。」


一瞬、何故団子を持っている事に気付いたのだろうと疑問に思いはしたが。

よく考えてみれば、まだ作って間もないせいか。
弁当の上に乗せて一緒に包んでいた小ぶりの箱から僅かに甘い香りが漏れ出ていて、だからか、と合点がいく。


「姐さんたら、冗談きついわぁ…蛍はんとうちは、そういう仲やあらへんから。」

「呆れた。あなたもあなただけど、鋼鐵塚さんも鋼鐵塚さんよね。年頃の娘に、いい大人が毎日毎日…それこそ、十年近くもお弁当作って持ってこさせて…普通は何も無いわけないと思うでしょ、」

「だって…蛍はん、うちがお弁当作って持ってかんと『何で来なかった』って怒りはるし、初めて会った時みたいにお腹の空きすぎで倒れられでもしたら…。」

「だからね…そういうところよ。あなたももう子どもじゃないんだし、ここらで白黒はっきり付けておかないと。ほら、もしかしたらあなたも近いうちに鋼鐵塚姓になるかもしれないし。」

「…〜っ、姐さんのいけずっ!!!急に揶揄わんといて下さいな!!!うち、さっさと用事すませて帰りますさかい、」


ほなこれでっ…!

やや不躾に言葉を放り、人を追い越して早足に先へ進む。
後ろから追い縋るように『ごめんねー!』と姐さんの声が聞こえたが、とてもじゃないけど返事を返せそうもなかったので、そのまま捨て置かせてもらう事とした。


勢いを殺さぬまま石段を駆け上がったせいで息が切れ。
心なしか口の中へ血の味が転がり始めるが、今の自分を誰にも見られたくないと思うと、足を止めるに止められず。

…結局、一番上まで登り切ってしまってから、弁当を抱えたまましゃがみ込んだ。


「(…あかん、)」


あかん、あかんわ…!

おかめの面をしているから、赤面しているのがはっきりと分からないのだけが救いだが。


「(新婚さんみたいて…。うちの苗字が、近いうちに蛍はんのと同じになるかもしれん、なんて…。)」


そんな事、絶対あらへん。


「(うちは蛍はんが好きやけど、蛍はんは…うちの事なんか何とも思っとらへんはずやもん。)」


ずっと昔からそうだったんだから、今更それが変わるはずなんか無い。

確かに、傍から見れば何かあるのかと思われてしまうような関係なのかもしれないけど。


「(うちは蛍はんにとって、ただの都合のいい飯炊き女やさかい…うちの思いなんか、一生伝わらんくても構わへん。)」


自分達の仲は、それ以上でもそれ以下でもない。
これからもそうであったって一向に構わない。

やや悲しくはあったが、自分で自分に言い聞かせ、どうにか心を落ち着かせて。


ようやっと整った息を吐き出し、何気なく空を見上げ。
もたもたしているうち、太陽が頭の真上へ来ていた事に気付き、急いで休憩所へ走った。


***


「…ごめんやす、こっちに蛍はんいてはりますか?」


混み合う休憩所を、こんな具合に声をかけながら回る事しばし。

本日五度目の『いや、こっちには来てないね。』の言葉を誰からともなく貰い、がっかりしてしまう。


お礼を言って、まだ回っていない休憩所へ足を向ける最中、ついてないなと溜息が出た。

…そういえば、二番目に回った休憩所で『今日は蛍がこっちまで上がってきてるのは見てないし、もしかしたら外に刀を届けに行ってるのかもね。』と言われたのも思い出し、また溜息が出る。


「(蛍はん…お弁当いらへんのやったら、昨日のうちに兄さんに言ってくれはったら良かったんに、)」


いくら白玉粉で作ったからと言ったって、時間が経てば団子は固くなるし、弁当だって悪くなる。

最悪、巡り会えなかったその時は自分でその辺に座って全部平らげてしまおうと決めたその時。


チリン、チリン…と。
割に近くから、風鈴の音と誰かの足音がしてきたので、つい足を止める。

軒先へ風鈴を吊すのはもう少し後である今時期に、この涼しげな音を引き連れて歩く人物といえば、一人しか思い浮かばない。


彼が近くに居るのだと思うと、いつでも嬉しいような、緊張するような…不思議な感覚に苛まれるのだか、今この時ばかりは『会えるかもしれない』という喜びの方が勝っていた。

さて、どこから来るものか。

待ちきれず、広い道に出てみると、どうも下の方…今し方自分が登ってきた石段の方角から音がしてくるようだ。


少しは立ち止まればいいのに。
彼の事となれば、自分の足は考えるより先にすいすい動いてしまうものだから困りものだ。

苦笑いは面の下へ隠し、そっちへ走って。
石段の上から眺め降ろせば、思った通り…傘へ無数の風鈴を下げ、えっちらおっちらこちらへ向かってくる彼の姿が見えた。


「蛍はん…お帰りやす!!」


元気よく声を上げれば、火男の面を被った顔がこっちを向き、僅かに歩みが早くなったのを認めて嬉しくなってしまい。

…よせばいいのに、言うことを聞かない足に連れられ、彼の方へ走り出してしまう。


縮まっていく距離と、うるさいくらいに早鐘を打つ心の臓。

果たして。
薄ら汗をかき、僅かに息を切らしながら石段の中腹辺りで落ち合う事に成功したが、彼はこちらを見下ろしながら呆れたように言う。


「……馬鹿か、里で一番急な石段だってのに、声掛けるなり転がるように駆け下りて来やがって。」

「すんません…他の方から、刀届けに行かはったかもしれんて聞いとったさかい、会えてつい嬉しなってしまって……。」

「落ちたら痛ぇどころじゃすまねえから気を付けろよ…ったく。危なっかしい嫁持つと肝が冷えらぁ。」

「(今『嫁』って聞こえたような気がしたんやけど…。)」


きっと聞き間違いやね。
そういう事にしてまた謝ると、彼は徐に火男の面に手をかけ、顔のまわりに巻いていた手拭いも取り払い、汗を拭き始める。

いつ見ても整った顔だな、と思いながらぼんやりそれを眺めていると…どういうわけか、彼の手がこちらの頭の後ろに伸び、おかめ面を結わえている紐を解こうとしてくる。


「ちょ、ちょっとっ…いきなり何しはるんや!!蛍はんは生まれも育ちもここやさかい、里の決まり知ってらっしゃるやろ!?」

「は?…知ってるからこうしてんだろうが。」

「待っとくれやす!!うち、兄さんからきちんと聞いとりますんや…ここの里の女は、結婚するまで自分の家族やら親族以外の男に面の下の顔見せたらあかんのやて、」


必死に抵抗しながらそこまで言うと、彼は不思議そうに返してくる。


「馬鹿こけ。お前、三年前から俺の嫁じゃねぇか。」

「…は?」

「あぁ!?まさか忘れたわけじゃねぇだろうな…これからも毎日飯作って持って来いっつったら『喜んで、』とか何とか言ってたじゃねぇか。」

「え…あー…、そういや、そないな事もあったような、無かったような…?」


それとこれとが、どうして嫁云々へ繋がったのだろう。
かなり困惑しながらもついに抵抗していた手は捕まえられてしまい、彼のもう片方の手が硬い結び目を解こうと後頭部を探る。


「とにかく、俺は里長から教えられてんだ。『いつも飯の世話してくれる女に、今後の飯の世話を頼んでみて…喜んで引き受けてくれんのが嫁だ』って。」

「それ、教えてもろたのいつの頃でしたん…?」

「覚えちゃいねぇが、随分ガキの時分だ。まあ、祝言も終わってねえから、自覚がねえのも当たり前か───そんで?祝言はいつにする。」

「えぇと、あの。ちょっとその話は置いといてもろて。蛍はんは、うちが嫁で本当にええんですか……?」

「往生際の悪い奴だな…良いに決まってんだろ、言わすな、馬鹿。」


何でもないようにさらりと寄越された言葉は、何処までも真っ直ぐで分かりやすい。

次いで、顔のみならず。
耳や首筋にもじんわりと熱が集まり始めたのを感じ出したころ、ようやっと紐が解け。

思わず笑ってしまうくらい簡単におかめの面が石段へ落ちて…面越しではなく、初めて互いに顔を見せ合っての対面が叶った。


「(ど、どないしよ…!)」


鏡で確認しなくとも、自分の顔が真っ赤なのは分かっているけれど、全部が彼に見られているというのはどうにも気恥ずかしく、目線が落ちるのと同様に、自然と顔も足下へ向けられてしまう。

そわそわして落ち着かないのも束の間。


きちんと見せろ、という声と共に彼の手が顎の下へ入り、やや強引に上を向かされ…僅かに炎の色が灯ったような橙の瞳と目が合い、どきりとした。

うちより随分年上なんに、頑固で、口が悪くて、癇癪持ちで…でも、優しいとこもあって。


「(うち、やっぱり…蛍はんが好きや。)」


今まで会ってきた人の中で、いっとう一番───それくらい好きや。

心の奥がきゅうっと抓られるように。
甘いような擽ったいような心地に包まれながら、どちらともなく口を寄せ。

互いの唇が触れ合うか否か、という程になってから。


「ちょっ、ちょっと待ったぁあぁっ!!!」


これまた聞き覚えのある男性の声がし、反射的に彼から離れて辺りを見回すと…向こうの藪から、面と同じくらいに耳を真っ赤にした鉄穴森が体を突き出していた。


「雰囲気を壊しちゃいけないと思ってさっきから黙って見てりゃあ、石段の真ん中で白昼堂々何て破廉恥な真似を…!!鋼鐵塚さん、あなたって人は…自分より随分歳下の若い子に何て事するんです!?」

「あぁ!?こいつは俺の嫁だっての、嫁と仲良くする分にゃ何も文句ねぇだろうが、」

「嫁ってアンタ…馬鹿言うのも程々にして下さいよ!!そもそも、瑠音さんの同意はあったんですか?ど、う、い、は!!!いい歳していつまでも嫁が来ないからって、いたいけな若い子言いくるめて無理矢理妻にしようとしてるんじゃないでしょうね!?」


こんな具合に二人が言い合いを続けるものだから、石段の上へあっという間に人集りが出来…自分と蛍が面を外して身を寄せ合っているのももれなく目撃されてしまい、顔から火が出んばかりであった。

更に悪い事に、騒ぎを聞き付けたらしい里長が人を掻き分けて石段を一つ降り『蛍ー!!祝言は明日でええかー!!!』なぞと声を張り上げたせいで、状況がよく分からず集まっていたであろう人にも、何と無しに事情が伝わってしまったようで。


ざわめきの中に『デキてたなんて聞いてねーぞ!!』『良かったわね、おめでとー!!』と、様々な野次が混ざり始めたのを聞いて、いよいよ我慢がきかなくなった。


「…けず、」

「あ?何だ…?」


何か言ったか、と蛍から問われたが、こっちはもうそれどころではない。


「…いけず、いけず!!!いけずいけずいけずっ!!!もうっ……みーんな、いけずーーーっ!!!」


半泣きになりながら大声で叫び、階段を駆け下りる。


「(知らへん…もう知らへんっ!!人様の恋路なんか気にせぇへんでもええんに、誰も彼も、何でそっとしといてくれへんのっ…!!)」


そんな風に思いながらも、止まらぬ涙を拭う事もせず、勢いに任せて家の方へ駆ける。


「おい待て瑠音っ!!さっきここは走んなって言っただろうが!!」

「待つのはアンタですっ!!鋼鐵塚さん、話はまだ終わってませんからねっ!!」

「瑠音ーっ、どうか末永く、蛍を頼むでー!!」


これでもかというくらい後ろから声がしたが、無論振り返る事は無い。

家に帰ったら…自分の部屋の布団に篭もって、金平糖でも貪りながら好きな小説を読もう。

とにもかくにも、今日の炊事は全部取りやめだ。


───ところで、明日は本当に祝言を上げる事になるんだろうか。
もしそうなら、晴れればいいが。


end.

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