倉庫 | ナノ


▼ 頑張れ少年/アリババ

・前作、『告白』の続き。
・相変わらずアリババ君→夢主様への片思い。
・前回のアニメの内容をフル活用。
※名前未入力の場合表記は全て「ルネ」で統一。


〜船上〜


アクティア王国に向かう途中の船上での事。アリババは一人甲板に出て空を眺めていた。


「いやー、今日も青いな…。」


ハハ、と疲れきったような乾いた笑みを張り付けて、ひたすら上を見上げる。

…こうしていないと悔しさで涙が出てしまいそうなのだ。


実は先程白龍に言われた『モテないですね』という言葉がグッサリと心に突き刺さって抜けない。

それどころか、今まで一緒に数々の苦難を乗り越えて信頼関係を培ってきたはずの戦友──アラジンやモルジアナにも好き勝手言われていたし。


それだけならまだしも、極めつけには前々からアリババが心を寄せている少女、ルネまでもが『確かにアリババってたまに女々しかったりするよね、』などと、こっちのイメージをダダ下げにするような台詞を吐く始末。

後々になって、“からかっていただけ”と宣い、平然としている仲間達の強かさに、アリババの心の傷口は癒えるどころか、塩でも擦り込まれたかのかようにジクジク傷んだ。


最早、飲むと元気が出るような類いの某錠剤やらドリンクやらを目の前に出されたり、口の中に流し込まれたとしても、今の彼の傷心っぷりでは、何者もアリババを元気付ける事は不可能だろう。


「皆して俺の事、モテないだの、女々しいだの、変態だのって…。」


……まあ、言われてる事はあながち間違っていないから全否定はできない。


しかし、モテないっていうのは解せない。
俺だってそれなりのお店に行けば…それなりの、お店に、行けば…?


「あぁあぁあぁーっ!?」


やっぱダメだ。

頭を抱えて真っ青になっている彼の脳裏には、初めてのお店で出てきた筋骨隆々で女性とは思えないほど逞しすぎるホステス――――エリザベスの姿が浮かんでいた。


ある意味で一生忘れられない貴重な体験をした彼は、そこで、『お嫁さんにもらうなら普通の女の子がいい』と痛感したのだ。


「(そうだ、お嫁さんにもらうなら、純情で大人しい子がいい!!コレ定番だし!)」


純情で大人しいと言えば…やっぱりルネか。

いや、待てよ?
さっきルネはけっこうひどい事を言ってたような…。


他に『純情で大人しい子』という肩書きがピッタリな女の子はいなかったか、と記憶の中を必死に詮索してみるものの、残念ながら、ルネ以外には誰もいなかった。


もちろん、そう思うのはアリババが彼女を好いているから多少ルネを贔屓目に見ているせいもあるんだろうが。


「(そうなるとやっぱり告白、だよな…。)」


本当はシンドリアを出る前に彼女には自らの気持ちを伝えておくべきだったのだろうが、どうしてもあと少しというところで毎回邪魔が入り、ルネに告白するチャンスをぶち壊されている。

今度こそ誰にも邪魔されないように綿密に計画を練らなければ…。


それにしても、こういうのは一体どこら辺で切り出すのがベストなタイミングなんだろうか?


船に乗っているうちか?
アクティアに着いてからか?
それとも、レームに着いてからか、レームへの道中に伝えるべきか?


こういう経験は一度もないから、考えれば考えるほど分からなくなってくるもので。


考えに考え抜いた末。

結局告白する事よりも、ルネの事を考える方に心が移ってしまい、ニヤニヤした挙げ句に思春期の少年特有の良からぬ妄想へと変化した。


「ルネ…。」


フフフ…と悦に入った笑い声を響かせ、少年の脳内は幸せ過ぎて蕩けそうなほど理想的な未来を描き出す。

それを影で気味悪そうに見守る少女が一人。


「アリババ、何考えてんだろう…?」


頭でも打ったのかな?

それなら、モルジアナに頼んで特に彼の頭を重点的に蹴りあげてもらえれば治るのかもしれない。


しばらくの間、アリババがルネに避けられたのは当然の事だった…。

自分でチャンスを遠ざけてしまい、これでまた当分は告白できなくなったのはよもや言うまでもあるまい。


end

prev / next

[ back to top ]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -