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▼ 恐怖の本丸企画

割とホラーゲームが好きです。

自分でするのも好きですが、大勢で交替しながらやるのもいいな、と思っているところです。


と、いうことで。

今年の夏辺りに出そうかな…と思っている企画ネタを、サンプル程度に少々暴露。


▼以下『荒れきった本丸を進む審神者と近侍(短刀)』

*設定
政府からの命令で、荒廃した余所の本丸の探索をする。

・ver.薬研藤四郎


荒れきった本丸に足を踏み入れて、わずか10分足らず。

報告書にあった通り、さっそく怪奇現象が起こった。


日本人として、土足で余所の家に上がる(例え、そこが廃虚となっていても)のはどうなんだ、という感性が働き、最初は履物を脱ごうとしたのだが。

供として着いてきてもらっていた薬研に『池田屋に突っ込むときはいつでも土足だぜ?』と教えられ、結局そのままで上がり込んでしまったのだ。


そうしたら、この通り。
薬研と自分の背後から、すすり泣く声と共に、ズルズルズル…と、何かを引き摺るような奇妙な音が着いてきているのだ。

こちらが歩みを早めれば、あちらも歩みを早め、逆に緩めてやれば、同じようにする事に、若干の気味悪さを覚える。


その間に、引き摺る音の他に、ビシャッ…と、液体が零れる音がして、むせ返るような血の臭いが鼻孔に届いた。

最初は空耳ということにしておいたが、ここまでぴったり着いてこられるとなると、笑い事では済まなかった。


「…ねえ、薬研。後ろにいるのって…まさか、」


開始早々の手荒い洗礼に耐えかね、歩みを止めて、隣の薬研にそう耳打ちすると、彼は落ち着き払った様子で頷く。

音は、まるで彼女達を待つように、少し離れた所で止まった。


「ああ…後ろに居るのは多分、大将が想像してるようなヤツで間違いないな。」


「じゃあ、やっぱり…!?」


思わず声が大きくなるが、恐怖のために、今にも悲鳴が漏れ出しそうになる彼女の口を薬研の手が素早く押さえた。


「…いいか、大将。これから先、どれだけ恐くとも、ヤツが自然と離れていくまで絶対に後ろを振り返らないでくれ。」


…出来るな?

鬼気迫る表情でそう言われてしまっては、頷かざるをえなかった。


不安なら、と差し出された手にありがたく掴まり、彼女は恐る恐る歩き出す。

調査はまだ始まったばかり。
こんなのは、きっと序の口だ。


…今からこれでは、先が思いやられる。

解れてきた髪を耳にかけて視線を少々下げると、彼の綺麗な藤色の瞳が、こちらを心配そうに見ていた。


「…大丈夫よ、」


へいき、と。
自分に言い聞かせるように呟けば、繋いだままの手を強めに握り返された。


*言わずもがな、対応が男前。審神者を励ましたり、護ったりしながら確実に探索を進めていってくれそう。

−−−−−−

・ver.秋田藤四郎


「こっちです、主君!」


鋭く叫ばれた先の部屋に夢中で飛び込めば、秋田によってすぐさま障子が閉められた。

震えながら二人で抱き合い、じっと息を殺していると。
間もなく、壁越しでも震え上がる程の凄まじい瘴気が辺りに充満し、廊下を異形の物が彷徨い出す。


どうやら自分達を捜しているようだが、姿が見えないためか、それは機嫌の悪そうな唸り声を上げる。

これなら、しばらく時間が稼げそうだ。
…そう思ったのは束の間。


気を抜いて大きな音を受け入れる準備をしていなかった耳に飛び込んできたのは、ばさ、という音だった。

驚いて『うわぁ!』と叫び声を上げそうになる秋田の口を塞ぎ、障子に開いた穴から恐々覗いてみると。


なんと、それはここのすぐ隣の部屋の障子をばっさりと斬り捨てて、中を覗いていたのだ。

持っている刀の大きさから察するに、元々太刀であったようだが、やはり暗い所が見えないせいか、目を懲らしてじっと暗闇を見つめている。


「(それなら…。)」


一か八かではあるが、彼女は秋田を抱き上げ、大きな箪笥の陰に身を隠した。


「あの、主君…?こんな所に隠れたら、逃げられなくなるんじゃ…、」


不安気にそう言う彼を制し、彼女は気丈に笑みを浮かべる。


「大丈夫。大丈夫だから…少しだけ、じっとしていて。声を出してはだめよ、」


そう言い聞かせて、震えている秋田を強く抱き締めた矢先に、ザン、と。
自分達の隠れている部屋の障子が斬り伏せられ、それが中の様子を見回す。


「(お願い、どうか気が付かないで…!)」


一心に祈り続ける事しか出来ないが、ただ恐怖を噛み殺しているよりかはよっぽど気が楽になる。

…それから、どれ程時間が経ったろうか。
もしかしたら、1分にも満たない間だったかもしれないし、30分以上経ったのかもしれない。

いつの間にか、肌に突き刺さるような瘴気は、足音と共に遠くへ行ってしまっていた。


「やりましたよ、さすが主君です!」


僕達があんまり見付からないから、諦めたみたいです。

先程までの怯え様は何処へやら。
いつものような弾んだ声で報告してくれた秋田の声に息をつくと同時に、全身から力が抜ける。


「私達、本当に助かったのね…?」


「はい!いつもと違って、大分怖い隠れんぼだったけど、上手に隠れられて良かったです、」


「頑張ったね、秋田君。」


「はい!主君も…、」


互いに互いを労い、とりあえず恐怖から逃れる事が出来たことを喜ぶ一方、彼女は何とも形容しがたい漠然とした不安を覚え始める。

ここの本丸内を先に探索していた審神者達の部隊とは未だに会えていないし、事前に渡されていた資料には記されていなかった、何だかよく分からないものまで彷徨いている始末だ。


現状は、はっきり言って最悪。

今は運良く見つからなかったからよかったものの、非常に危ない状況だった事に変わりは無い。


このまま、秋田と一緒にどれだけ進めるか。
…調査は切り上げて、早々に戻った方が良いかもしれない。

再び迫ってきた強い瘴気をいち早く感じ取り、彼女は秋田を連れて部屋を飛び出した。


*隠れながら進むタイプ。お約束のフラグは、言わずもがな大量建設。お互い助けあいながら、ゆっくり探索。

−−−−−

・ver.今剣


わけの分からない物に追いかけられて、必死に逃げる事数分。

今剣が手を引いて誘導してくれたおかげで、どうにか一時的に撒く事が出来たようだったが、次はいつあれと出会すのかと考えただけで震えが止まらなくなる。


過呼吸のために息を弾ませ、汗を拭いながら座り込むこちらを心配してか、今剣は小さな手を伸ばして優しく背中を擦ってくれた。


「だいじょうぶですか?あるじさま。」


「ええ、平気よ…、今剣は?怪我は…してないみたいね。」


よかった、と言いつつも、今剣は息が全く上がっていない事に気が付いて、ギョッとする。

さすがは刀剣男士、というか。
短刀勢の中でも、特に走るのが早い部類に入るだけあって、あのペースに合わせて走るのは大分辛い。


日頃の運動不足を再確認した後、やっとの事で立ち上がると、彼は『あるじさま、あるじさま。あれをみてください!』と、本丸内同様に、荒れに荒れた中庭を指さす。

…そこには、何やら怪しげな倉が建っている。


「あそこになにか、やくにたつものがあるかもしれませんよ、」


あるじさま、いってみましょう!

つとめて明るく言い放ち、今剣は彼女の手をぎゅっと握った。


あんなに走った後なのだから、もう少し休ませて欲しいところだが、一カ所に長く留まっていては調査が進まないばかりか、あの化け物に見付かる確率もそれなりに高くなってくる。

とりあえず、今の今まで状況が進展しない事や、自分達とは別に動いて本丸内を探索しているはずの審神者達の部隊と全く会えていない事もあり、怪しいところは調べておいて損はないだろう、という意識が働く。


あまり気は進まなかったが『そうね』と同意を示せば、今剣は可愛らしく笑い。

なにかしかけがあるかもしれませんから、あるじさまはぼくのうしろにいてくださいね、…と、さり気なく物騒な事を言う。


そんなわけで、慎重に中庭に降り、草をかき分けて倉の前まで来たはいいが。
何故か倉の扉は不自然に、丁度指が3本やっと入るくらいの隙間が開いていた。

気になるが、こういうものは、不用意に開けない方が良いだろうか。


「どうしたらいいかしら…?」


「そうですね…、」


彼は少し考える素振りをして、僅かな隙間から倉の中を覗いてみたり、周囲を見回したりしていたが、すぐに『分かりましたよ!』と声を上げる。

今度は何かと首を傾げていると、今剣は何故が地べたの上に腹這いになる。


「えっと…どうしたの?今剣ちゃん、」


「あるじさまも、ぼくとおなじかっこうをしてください。」


「今すぐ?」


「はい、そうです。あ…、できれば、あたまをうんとひくくさげて、うごかないでいてくださいね?」


じゅんびができたら、とびらをあけますよー…?

地べたの上に寝転がるのは正直抵抗があるが、今剣に言われたのでは仕方ない。
はやくはやく、と急かされるままに土の上に身を横たえ、自らの頭を守るように押さえ付けると、彼は満足そうにそれを眺める。


「それじゃあ、ぜったいにあたまをあげないでくださいね…いきますよ〜?」


それ、という掛け声と共に、彼が小さな隙間に指をかけて戸を開くと。

間髪を入れず、倉の中から何本かの矢が飛んで来て頭上を通過し、すぐ近くの木の幹に勢いよくささった。


はい、もうだいじょうぶですよ。

今剣の声がしてから頭を上げ、着物についた土を払って倉の中を見てみると、中には、糸が縛り付けられた小型の弓が配置されており、どうやら倉の扉を空けると、その反動で弓が自動的に引かれ、中に入ろうとする者を仕留める仕組みになっていたらしい。


矢が刺さった木をよく見てみると、丁度自分の胸と心臓の辺りの高さに刺さっていて、ますます恐ろしい。

もし、今剣がいなかったら、と思うと、ぞっとした。
自分だけであったなら、今頃何も考えずに扉を開き、まんまと罠にひっかかって血だまりの中に沈んでいたはずだ。


それにしても、一度中を見ただけで仕掛を見抜いてしまうとは驚きである。

これまでもそうだったが、今剣は、本丸内に仕掛けられた数々の罠を見事に見抜いて幾度も自分を助けてくれた。


小さな背中を頼もしく思いながら、彼女は彼の後ろに着いて倉の中へと足を踏み入れた。


*大量のトラップを見抜いて、審神者を助けてくれる。走ると早いので、追いかけてくる勢にも捕まらない。

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