▼ これから書きたい男性審神者集
以下:これから書きたい男性審神者(サンプル)
・ver.1『ゲーマー審神者』
※20代前半、もしくは10代後半設定
「あの、主様……今、政府の関係者の人達がいらっしゃって。」
どうしたらいいですか?
襖を開けてそう声をかけるものの、それに対して主は答えてくれず、こちらに背を向けてゲーム機のコントローラーを握っているだけ。
もちろん、部屋に入り込んで勝手にTシャツの裾を噛み始めた虎にもお構いなしである。
ここ数日間、主は昼夜を問わず、ずっとこの調子なので、髭は伸び放題だし、髪もぐしゃぐしゃ…おまけに、何時間も液晶画面と睨めっこをしているせいか、目も血走っており、見るに堪えない状態だ。
さらに、その隣では悟りきった表情を崩さぬまま、一心不乱にコントローラーのボタンを連打する鯰尾と、目の上に蒸しタオルを乗せたまま『ボスが…ボスが…!』と呟き、魘されている御手杵がいた。
この人達は、一体何日間徹夜をしてるんだろう…。
そんな事を思いながら、主に引っ付く虎達を抱え上げると、不意に主の声が耳に届く。
「ごめん、五虎退。政府のお偉いさんには『主様は今超絶素敵なシャングリラに行ってますので急に戻るのは無理です。今日はお引き取り下さい!』って言っ……おあぁあぁあぁっ!?!?」
「ど、どうしたんですか!?」
コントローラーを放り投げ、畳の上にいきなり倒れ込んだ主を目の前に困惑しつつそう問えば、同じようなタイミングで鯰尾もパタリと後ろに倒れる。
「はは、またゲームオーバーになっちゃいましたね…。俺はまだ何とかなりそうですけど、どうします?主さんがキツイなら、休憩入れます?」
「うん、そうする…ごめん、五虎退。重ね重ね悪いんだけどさ、押し入れから布団出して御手杵に掛けてやってくれない?」
「は、はい………、」
「あと、俺と鯰尾の分の目薬と蒸しタオルを持ってきてもらえると、ものすごく有り難いです。」
ちゃっかり付け足された頼み事を含め、忘れないように頭の中で繰り返しつつ、五虎退は最初の指示通りに押し入れを開け、取り出した布団を御手杵にかけた。
あとは…ええと……。
少々思案した後に、蒸しタオルと目薬を取りにぱたぱたと廊下をかけていく五虎退の足音をかろうじて拾いながら、審神者は残された虎を一匹抱き上げ、目の上に乗せてみる。
大分懐かれているせいか、虎は全く暴れず、大人しくやわい腹の部分を提供していてくれる。
もっふもふ。
かつ、やわらかくて温かな虎のお腹を蒸しタオル代わりにし、呟く。
「やっぱ、三徹は辛いよな…。」
すまん、鯰尾、御手杵。
初心者二人をゲーム沼に引きずり込んだ犯人は俺でした。
こっちです、検非違使さん。
…しかしながら、その呟きは既に爆睡している二人には届いていないのだった。
*とりあえず、みんなでワイワイしながらゲーム。ゲーム完全攻略のために二徹、三徹するのは当たり前。鯰尾、御手杵は毎回道連れ。
−−−−
・ver.2『元美容師審神者』
※20代後半
「よし…ほら、出来たよ!」
声と共に、自信満々に突き出された鏡を覗いてみると、そこにはいつもと全く違う自分がいる。
驚きと嬉しさに何も言えずにいると、美容師をしていた頃についた癖のためか、主は勝手に話し出す。
「分け目、変えてみたんだ。あと、前髪少し短くしたし…後ろの方も短くするついでに、ここの所から軽く裏編み込みしたんだけど、どう?」
触ってみれば分かるよ、と言われて恐る恐る後頭部に手を伸ばして触れてみると、確かに、いつもとは違う心地がした。
「相変わらずこのこだわり様、すごいよね……ねえ、主。今の俺、可愛い?」
「うん、可愛い可愛い。あ、ついでにマニキュアも塗り直そっか。今度は、検非違使と戦っても簡単に剥がれないようにジェルネイルにしとく?」
主がいつも大切に持ち運んでいる箱の中には、鋏やらメイク道具以外に、微妙に色が違った赤いマニキュアの小瓶が幾つも入っている。
暗めの赤、黄色みの強い赤など、こういう微妙な違いが分かるあたり、主は非常にセンスが良いんだろう。
ほら、どれがいい?と、目の前に並べられるマニキュアの小瓶の列を眺める度に、加州はいつもわくわくしてしまうのだ。
今の気分に合った一番丁度良い明るさの赤を選ぶと、主はすぐに仕事に取りかかった。
「色々買い揃えてはみたけど、加州はやっぱりこの赤好きなんだ…もしかして気に入ってる?」
「当たり前だよ。だって、この赤、一番最初に主が選んで塗ってくれたヤツじゃん。ま、これだけ一緒にいるんだし、好みが似てくるのも当然だよね。」
半分冗談のつもりで言ってみただけなのに『そうかもしれない』と同じような調子で返してくるものだから、思わず赤面してしまう。
いつも綺麗にしてくれるどころか、餡子の上から更に砂糖を大さじ一杯分ぶっかけたようなでろでろに甘い台詞まで言ってくれるとか。
何それ、惚れそうなんですけど。
もちろん、抱きたいとか抱かれたいとか…そっちの意味じゃなくて。純粋に、人格的に好きっていうか。
へにゃり、と。
大好きな人の膝の上で撫で繰り回された後の猫のような笑みを浮かべ、加州は自分の爪に丁寧に塗られていく赤いマニキュアを嬉々として見つめた。
*若い割にトークも上手いし腕も確か。刀剣男士達のヘアーメイクは日々の日課。
−−−−
・ver.3『父親系審神者』
※30代後半
「そら、いい加減起きろ…今何時だと思ってんだ!!」
スパァン!!
…と、盛大に障子が開けられる音と共に差し込む強烈な太陽光。
そして、この本丸の主兼父親と化している男の野太い声で、粟田口兄弟の朝は開始する。
他所の本丸では、短刀は短刀。脇差は脇差、という具合にきっぱりと部屋が分けられているそうだが、ここはそうではない。
主曰く、兄弟は全員同じ部屋で寝るというのが昔からの規則の一つらしいが、どうしてそうしなければならないのか、よく分からない。
考えているうちに、また目蓋が重く…。
「(あと、五分だけ…。)」
すぐ傍の枕を手繰り寄せ、顔を埋めようとすると、がしり、と。
それこそ林檎を丸々一個握り潰してしまうくらいの洒落にならない握力が物理的に頭にかけられる。
…痛いどころの騒ぎではない。
頭皮にめり込まんばかりの勢いで圧をかけ続ける分厚い手を押しのけ、一期一振は、今度こそパチリと目を開けた。
「……おはようございます、主。」
「おう、…もう『おはよう』って時間帯でもないけどな。」
言われてみれば、そうかもしれない。
ぼんやりした頭のまま床から這い出して外を眺め、ぎょっとした。
太陽は既に頭の上に昇っており、時刻は既に昼過ぎだということが想像できた。
しかも、ぎょっとする事はそれだけに留まらない。
自分の周囲に眠っていたはずの弟達はおらず、代わりに畳まれた布団が隅の方にまとめて置いてあるのが見えるばかりだ。
一番の寝ぼすけの厚もいない。
と、いう事は………。
「私が、寝坊!?」
思わずそう叫んだ拍子に、好き放題に跳ねた髪が視界の端に揺れる。
そういえば今日は夕方近くに出陣の予定が入っていたはずだ。
念のために壁掛け時計を見上げると、時刻は既に午後四時。
こうしてはいられないと踵を返せば、眼前に少し大きめの風呂敷包みが突き出され、それを受け取ってすぐ、頭にまだほんのりと温かいグレーのシャツが被せられる。
「あの、主…これは?」
「決まってんだろ、お前が朝と昼食い損ねた分のメシと、アイロンがけしといたお前のシャツだ。」
見て分かれ。
ぶっきらぼうにかけられた言葉には、突き放すようでありながらもどこか温かみがあって。
胸の奥の方から熱いものが込み上げるような感覚を味わいながらもどうしていいか分からず、一期一振はそのまま立ち尽くす。
伏し目がちでいると、不意に頭に主の手が乗った。
「一期…言われなくとも分かっちゃいるとは思うけどよ、身支度はちゃんとして行けよ?それと、馬は先に庭先に待たせてあるから乗ってけ。」
そいじゃ、怪我しないようにな。
去り際、どこか照れくさそうにそう言うと、主は部屋を出て行ってしまった。
「ありがとう」と感謝の気持ちを伝える隙もない。
それにもどかしさを感じながらも、一期一振は急いで身支度を始めた。
*見た目の割に器用で何でもこなす素敵な父親系審神者。粟田口兄弟は、一期一振も含め全員息子ポジション。日本号、長曽根虎徹、次郎太刀とは飲み仲間。
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