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▼ *倍返し(下)〃

乱雑に敷かれた布団の上に転がされ、唇からはびっくりするくらい熱の籠もった吐息が漏れる。

これも薬のせいだろうか?
まだ直接何をされたというわけでもないのに、体中が疼いて辛い。


それどころか、着物と肌が擦れるだけの些細な刺激でさえ、今の自分には毒だ。

震えながら浅い息を繰り返していると、逃がさないとでも言うかのように鶴丸が覆い被さってきた。


彼と指先を緩く絡ませるだけで。

切なげに揺れる蜂蜜色の瞳に見つめられるだけで、自分の何もかもがどろどろに蕩かされるかのような錯覚に陥る。


本当に綺麗だ…。

彼の儚げな容姿に見とれている隙に、身に纏っていた着物はすっかり乱されていた。


腹部を押さえ付けていた帯が緩められ、すぐ傍に放り出されるのとほぼ同時に。
性急とも取れる動きで彼の指が太股を這い、下着越しに蜜を滲ませる秘所に触れる。


「ひゃっ………!?」


途端に、いつになく甲高い自分の声が部屋に響き、慌てて自分の口を手で押さえた。

咄嗟に思い出したが、今はまだ夜ではない。
実を言えば、時間の区分的にはまだ真っ昼間である。


万一、他の刀剣男士達に鶴丸と交わっている事が知れたら…それこそ大変な事になるのは目に見えている。
かといって、自分は情事の最中の声を全て飲み込んでしまえるほど我慢強い質でもない。

その間にも薬はじわじわと体内を蝕み、疼きを強くして正常な思考を奪っていく。


回らない頭で必死にどうすべきかを考えようとしていると、不意に抱き起こされ、仰向けからうつ伏せへと体位を変えられた。


「つる、まる…?」


訝しみながら振り返ると、この行動の意味がすぐ分かった。

彼の片手には先程放り投げたはずの帯の端が握られており、もう片方の手は、瑠音の両手首をまとめて掴み上げている。


「なにを……!」


しかし皆まで言わせてくれずに、彼女の手首は背中で組まされ、帯でしっかりと縛り上げられた。

ここまで来てようやく彼の意図が読めたが…少しばかり遅かったようだ。


為す術もなく恥ずかしさと恐ろしさに戦慄していると、彼はただ楽しそうに囁く。


「もし他の誰かが君の声を聞きつけて覗きに来たって、どうって事ないだろ?」


「だ、だって、そんな……。」


はずかしい、と言おうとした途端に、口の中に入ってきた彼の指によってそれは阻止される。


「あ、ふ………!」


ぐちゃぐちゃ、と口内を犯す指の動きに従って、唇の端からまた唾液が滴り落ちた。

こんな事になるくらいなら、仕返しをしようだなんて思わなきゃ良かった…!!


激しく後悔し、なんとか許しを請おうとするものの、彼が許さない。


「よしよし、いい子だな。これから先も、そのまま大人しくしといてくれよ……?」


子どもを宥めるような言葉が耳に届いた直後、びっしょりと濡れた下着にゆっくりと手をかけられた。



***



「あぁあっ………やだ、やだやだ…、ごめんなさ、ごめんなさいっ…!?」


泣きながら懇願してみても、行為はもっとひどくなるばかりだ。

腰を高く上げた状態で何度も中を蹂躙され、接合部分は互いの体液で汚れていた。
しかも、感覚は鈍くなるどころか回数を重ねていくごとに鋭さを増していき、今ではただ挿れられているだけでも強い快感がせり上がってくる。


もういっそのこと、何にも分からなくなるくらいまで漬け込まれた方が幸せじゃないかと何度も思ったが、行為に溺れる事すら許してもらえない。

…そのくせ、鶴丸の言葉はいつもの倍以上に優しい。
行為自体は一切手加減無しなのに、不思議なものだ。


今しがた気持ちよくなったばかりだというのに、体は相変わらず溶けそうなくらい熱い。
どうにも自由がきかない体を少しだけ動かせば、彼はからかうように内股をスルリと撫でた。


「んん………ふ…、」


「可哀想に、苦しいだろ?」


直接は答えずに首を何度か縦に振ると、何度も酷使された秘所にまた彼の物が押し当てられ、一息に奥へと沈められた。

泥濘みきった中は特に抵抗する事も無く、ぐちょ、と卑猥な音を立てて挿れられたそれを飲み込み、絡み付く。


自分の意思ではどうにもならない体の反応を恥ずかしく思いつつ、瑠音は喉で甘ったるい声を上げた。

本当は気持ちいい。
わけが分からなくなるくらい、もっとぐちゃぐちゃにして欲しい。


そんな浅ましくて淫らな願いは、間違っても口に出せない。

だから彼女は、その代わりの言葉を必死に口にする。


「…ごめんなさい、」


もうしない。
絶対にしないから、許して。


か細い声で再度そう伝えたが、やはりそれは聞き入れられなかった。

強めに腰が掴まれ、中に入れられた物が内装をぐしゅりと擦る。
その度に、彼女の正直な体は歓喜するように飲み込んだり食らいついたりを繰り返し、濃厚な悦楽を頭に届ける。


「ふ、あぁあっ………!?」


行為に没頭し、そろそろ互いに限界か、と思われる頃。腹の奥底には白い欲が吐き出され、それを塗り込められるような動きが加わる。

彼に抱かれて迎える何度目かの絶頂は、目の前がチカチカするようだった。

薄れゆく意識の中で聞こえたのは、やはり鶴丸の声である。


「…覗かれるのは一向に構わないんだが、他の男に君を抱かせるわけにはいかないな。」


瑠音はもう、俺でないと満足出来ないだろ?

淡く優しく…、けれど、絶対に逃がしてはやらないというような口調で問われ、また秘所から蜜が零れ出る。


彼が今回の事を許してくれるには、まだまだ時間がかかりそうだ。


結局のところ、鶴丸をあのチョコレートの餌食にするどころか、それをまんまと見抜かれてキツイ倍返しを食らったのは自分であった。

火照りが引かない体をまた性懲りも無く繋げ、沼のような快感を貪りながら、今回、彼女は『元気すぎる鶴に、それを助長するような薬を与えてはならない』という教訓を得たのだった。


end

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