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▼ 受けババ/アリババ

・アリババ君はヘタレ気味な回。
・そういう彼に迫ってみたい!という方におすすめ。
・アリババ君と夢主様は一応付き合ってます。
※名前未入力の場合、表記は全て『ルネ』で統一。


〜シンドリア某所〜


今にも歌い出しそうなくらい上機嫌に、#1name#は自分の隣にいる少年に抱き付く。

先程から彼女達は、緑斜棟内にある食客が泊まる部屋の一角───詳しく言えば、ベッドの上でじゃれあっていた。


『じゃれあう』とは言っても、それはルネからアリババへの一方的なちょっかい出しなのだが。

少々日焼けしている彼の頬をつついたり、金色の髪の毛を指に巻き付けてみたり。
とにかく、思いつく限りの幼稚で簡単な。いわゆる怒るに怒れない程度の軽い刺激を彼に与えていく。


「そんな事してて楽しいか?」


呆れ気味な質問にも、彼女は至って真面目な顔のままで、しっかりアリババの目を見据えて答えた。


「聞くまでもないでしょ…好きな人の体を好き勝手に弄くれるんだから、楽しくないわけないじゃない?」


当然、といった調子で断言してみせて、何食わぬ顔でまた体をつつき回す事に専念し始めた彼女とは対照的に、アリババは耳まで真っ赤にしていきなり声を上げる。


「………ば、馬鹿!!おま、お前、何言ってんのか分かってんのかよ!?」


「もちろん。ああ、されるばっかりなのが嫌なら、私の体も好きに触っていいよ?」


そうすれば、君も私と同じ気分になれると思うよ、

悪戯っぽく笑って彼の手を取り、そこに自分から頬を押し当ててやると、アリババは気恥ずかしそうに顔を俯けた。


すっかり大人しくなった彼に気をよくして、今度は広い背中につうっと指を滑らせてみると、その途端にちょっと大袈裟なくらいに肩が跳ね上がり、引き結ばれていた口からは情けない声が漏れる。


「へぇ…アリババはココが弱いんだ?」


「止めろよ…。」


勢い良く顔を逸らしたのを見て薄く笑い、『良い反応だね?』なんて茶化すと、尚更女の子みたいに頬を染めて恥ずかしがる彼が可愛らしくて。

ついつい意地悪く同じ箇所を撫で上げれば、今度はよりはっきりとした反応を示してくれた。


「やっぱりココだね。」


何気なく漏らした一言にも、彼は過剰に反応する。


「ち、違うし…。今のはちょっと、何かむず痒かっただけだし。」


本当はこういう事に関しての免疫なんか、ちっとも無いくせに。

それでも無理して強がってみせるのは、彼の最低限のプライドなのか。はたまた、大人としての未熟さや、未だ残る幼さのせいなのか。


…どちらにせよ、私はそういった点を全て引っくるめてアリババが好きなのだ。

むしろ、彼以外の男にこんな風な振る舞いをされたら、どんなに好みのタイプであったとしても、これから先に進む気が消失してしまいそうな気がする…。


そんな事を考えてばかりいるから、いよいよ互いの肌と肌を触れ合わせるというような幼稚で誰でも出来るようなスキンシップでは物足りない。

彼女が欲しているのは、子供同士の生温くて微笑ましい馴れ合いではなく、もう少し上の。
大人がするような、もっともっと素敵な事だ。


「アリババ、キスして。」


「は………!?」


ルネの発した衝撃的な言葉に固まり、困ったように自然を彷徨わせながら、彼はやっぱり顔を赤くした。

どうやら、アリババはいつまでたっても『気恥ずかしい』という気持ちが抜け切らぬらしい。


…ただ単に、耐性ができていないだけかもしれないが。


「これじゃ、どっちが女の子か分からないね。」


のどの奥で笑ってそっと彼の手の甲に指を這わせ、緩く指を絡ませれば、程なくして彼からの控え目な口付けが唇に落とされる。

ちゅ…、と。
本当に笑えないくらい控え目に来るものだから、もう少し深くしようと、こちらから身を寄せたのに、それに驚いて彼はすぐ身を引いてしまう。

幼稚で微笑ましい加減のそれは、ルネを満足させるどころか、かえってひどい渇きを誘発するだけだ。


「…下手くそ、」


恨みがましそうに言葉を吐き出して少しむくれてみせると、『ごめん』という謝罪が帰ってきた。

私は君に謝って欲しいわけじゃないのに…。


アリババはけっこう器用な方で、大抵の事はコツさえ掴めば出来てしまうクチで。
しかしながら、恋愛の分野となるとその器用さは発揮されないようだから、非常に残念だ。

でも、


「ね、もしかして…私の事嫌い?」


「そんなわけないだろ、」


こんなふうに『…私の事嫌い?』と聞いたときには、即答で『そんなわけない』と言ってくれるから嬉しい。

先程よりかは顔の火照りが引いてきた彼の顔を眺めていると、どうしようもなく甘くて切ないような思いが込み上げてきた。


ここまで感情的になれる辺りは、自分がとっくの昔に無くしてしまった唯一の『女の子らしい』部分なのかもしれない。


「大好き。」


突発的に飛び出した言葉に答えさせる余裕も与えず、ルネはただゆっくりと彼の唇を塞いだ。

その途端、酒を飲んだ時のような甘い酩酊感が彼女の渇きを一気に満たしていく。


最初は驚いて目を見開いていた彼も、彼女の気分が高揚していくのと同じ頃には気持ち良さそうに目を閉じてそれに応じていた。

お互いにこうして触れ合っていられる時間が何より心地好いから。
ずっと、体と体の隙間が全然無いくらいに絡み合っていられたらいいのに。


呼吸を奪い合うような、深い口付けをずっと彼と続けられればいいのに。

淡い願望を抱きながら名残惜しげに唇を離し、彼女は深く、ゆっくりと呼吸した。


end

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