01
冬が明けてまだ間もない、うっすらと寒さの残る昼時少し前。
一人の少年が、幅の広い道を俯きながら歩き回っていた。
「うー…どこに行ったんだ?」
下を向いたまま歩いていたために何度かすれ違う人とぶつかる。
その度に少年は「す、すみません」と謝ったが、相手はそれに舌打ちと悪態を返した。
「確かこの辺だったと思うんだけどな…」
ふと少年が目を上げると、何人かで群れている子供達を見付けた。
「ねえ君達、この辺で財布が落ちてるの見なかった?」
言った後になって、その子供達が持っているものが正に自分の探していたものだと気付いた。
「そ、それ!君達が持ってるその財布!」
「これがどうしたって?」
子供達は互いに顔を見合わせている。
「その財布はぼくが落としたやつなんだけど、返してくれない?」
すると子供達は一斉に大笑いし始めた。
「何言ってんのォ?こいつは俺が拾ったんだよ!俺が拾ったもんは俺のもんだ!」
財布を持っていた子供は生意気そうな顔を少年に向けた。
「えっ…それは困るよ!だってそれには、僕の今の全財産が…」
「えっマジで!?それを早く言ってくれよオォォ!」
返してくれるのか、と少年は一瞬ホッとした。
しかし子供達は逆にその財布を開けて中身を引っ張り出し始めた。
「スッゲェよ 結構持ってんじゃん!」
「ヤッタね!」
「ちょっと、何してるの、それ返してよォ!」
あわてて少年は財布に手を伸ばしたが、財布は他の子供の手に渡った。
さらにそちらに手を伸ばすも、また他の子供へと渡される。
「取れるもんなら取ってみろよ、このヌケサク!」
その子供達は小学生か中学生くらいで、少年とはかなり年が離れていた。
それにもかかわらず、少年が完全に舐めきられているのは決して珍しいことではなかった。
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