01
放課後の雷門中―。
雷門中水泳部は普段通り活動していた。
準備体操を終えた後、飛び込み台の前に数列に並んで一人ずつプールへと入っていく。
「なあ、知ってるか?サッカー部が助っ人を募集してるって」
「ああ、そうらしいな。でも何でだ?」
プールサイドで順番待ちをしていると、後ろの方から会話が聞こえてきた。
「お前、知らないのかよ?今度あの帝国学園と試合することになったって…」
「マジかよ!?あの帝国と!?」
(サッカー部か…)
サッカー部といえば、ひたすらサッカーバカな部長、円堂守を思いつく。
廃部同然だったサッカー部を立て直した幼馴染である。
「でも大丈夫なのかよ?サッカー部って確か部員11人も居なかっただろ…?」
「だから今円堂が走り回って人数合わせの助っ人集めてんだろ」
「あいつマジでやる気なのかよ…」
(まあ、あいつならそうするだろうな…)
小学校以前からの付き合いだからわかる。
サッカーに関する円堂の気合は凄まじい。
「でもよ、帝国って40年間無敗なんだろ?勝ち目あるのかよ…」
すると、順番待ちの列の後ろの方がにわかに騒然とし始めた。
噂をすれば影、部員募集の看板を持った円堂がプールサイドに走ってきた。
しかし、
「円堂危ない!」
「うわあぁぁぁ!」
どこかからそんな声が聞こえた直後、円堂は水溜まりで足を滑らせ、派手な音を立ててプールに落ちた。
それを見た瞬間、水緒は水中へ身を躍らせた。
(あんのバカ、プールサイドで走ったら転ぶなんて目に見えているのに…!)
仮に円堂が泳げたとしても、学ランが水を吸ってうまく動けないだろう。
案の定、円堂の身体はジタバタしながら沈んでいく。
円堂の元へたどり着いた水緒はすぐに円堂を引っ張り上げた。
「ゲホッ ゲホッ」
「馬鹿…プールサイドで走ったら転ぶってわからなかったの?」
「悪ィ悪ィ、ちょっと慌ててただけだよ」
呆れ顔でため息をつくと、手の甲でぐしぐし顔を擦って、円堂は笑った。
プールに落ちたのだから、当然上から下までびしょ濡れだった。
「全く…、取りあえずシャワーとタオルは貸すから、浴びてきな。
私は一郎太にパーカーか何か借りてくるから。」
「おう、ありがとな!」
一々自分もシャワーを浴びて着替えてから行くのは時間がかかるし面倒だ。
円堂をシャワールームに押し込んでから、自分のパーカーを羽織り陸上部の居るグラウンドへ向かった。
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