03



帝国のスローインで試合は再開したが、状況は何も変わらなかった。

暴力的なまでのその攻撃は、最早立ち上がるので精一杯な雷門の選手をいとも簡単に吹き飛ばす。

「こんなの、サッカーじゃ、ない…!」

円堂がボールを受けて傷つく円堂を見て、一郎太がつぶやいた。

それは雷門の選手も、見物している生徒も、誰もが思うことだった。

「絶対、このゴールは、守って見せる!」

「ふっ、一度として守れてはいないがな」

そしてシュートされたボールは、円堂に止められもせずにゴールに突き刺さった。

19点目だった。


雷門のキックオフ―。

しかし。

「嫌だ…もうこんなの嫌だあぁぁぁ!」

とうとう耐えられなくなったのか、眼鏡がユニフォームを脱ぎ捨てどこかへと走り去っていった。

ベンチに半田が居るとはいえ、彼もひどく怪我を負っている。

これではとても試合は続けられない。

帝国選手達はそんな雷門の様を嘲笑う。

それなのに円堂はまだ戦う気のようだ。

「まだだ!…まだ、終わって…まだ、終わってねーぞ!」

駄目だ、これ以上続けたら、円堂は…。

しかし円堂は再び立ち上がった。

また攻撃を受けると分かっていながら。


20点目が決まった時だった。

まわりのざわめきを聞いて顔を上げると、先ほど眼鏡が脱ぎ捨てていった10番のユニフォームを着た少年が、グラウンドに入ってきた。

その少年は、先日円堂のクラスに転校してきた、豪炎寺だった。

「!?どういうこと…」

どうして彼がここに居るのか。


正式な入部はしていなかったものの、帝国側が許可したため、豪炎寺は眼鏡の居たポジションについた。

試合が再開すると、またすぐに帝国にボールを奪われた。

そして再び、帝国のデスゾーンが円堂を襲う。

しかし、豪炎寺は逆に上がっていく。

「!?」

(何で止めようとせずに上がっていくの!?)

すると円堂の周りに光があふれた。

そして、円堂の手から現れた巨大な光の手が、

ボールを止めた。

「止めた!」

今まで何度やっても止められなかった帝国のシュートを、円堂が止めた。

「これだ!」

止めたボールを大きく振りかぶって投げた。

「行け、豪炎寺!」

豪炎寺はボールを受けると、素早くシュートの体勢に入って跳躍した。

「ファイアトルネード!」

炎をまとったボールは、帝国のGKをすり抜けてゴールに突き刺さった。

「!!」

雷門、これが初の得点だった。

「やった…やったよ一郎太!一点入った!」

「ああ!」

身体の痛みも忘れて、水緒は一郎太に駆け寄った。


その後、帝国側からの申し出により、試合は帝国の辞退で終わった。

つまり、雷門の勝利。


「よく来てくれたな!これで新生雷門サッカー部の誕生だ!豪炎寺、これからも、一緒にやっていこうぜ!」

しかし、豪炎寺はユニフォームを脱いでいた。

「今回限りだ」

そして、振り向きもせずに立ち去ってしまった。

「あっ、豪炎寺!…ありがとな、ありがとう!」

「キャプテン、止めないんスか?」

壁山の質問は、おそらく皆が思った事だろう。

「いいんだよ。さあ皆、見ろよ!この一点!」

円堂の視線の先には、20-1の得点版。

「この一点が、雷門の始まりさ。この一点が、俺達の始まりだ!」

「おお!!」

どんなに頑張っても歯が立たなかったけど。

たくさん怪我をしたけど。

この一点は、特別なものだった。


そしてここから、伝説は始まる―。







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