02
「何て格好してるんだお前は!」
陸上部に来た水緒を見た一郎太が最初に発した言葉がこれだった。
「…仕方ないでしょ、急ぎだったんだから」
自覚はある。
軽く拭いただけでまだだいぶ濡れているスクール水着に薄手のパーカー、これが今の自分の格好。
この格好で学校の敷地の反対側まで走ってきた事を考えると微かに頬が赤くなるのを感じた。
「…で、何でジャージなんか必要なんだ?」
「円堂が学ランでプールに落ちたから。落ち着きが無いんだから全く…」
「ははっ、円堂らしいな」
一郎太からジャージを受け取ると、グラウンドの方から「風丸さーん!」と、一郎太を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、宮坂君」
「そろそろ戻ったほうがいいな」
「うん、ジャージありがと」
一郎太がグラウンドへ走って行くのを見送ってから、水緒もプールへと戻った。
「ありがとな、水緒!」
一郎太のジャージに着替えた円堂は、再び看板を担いだ。
「ジャージは自分で一郎太に返しておいて」
「おう!…へくしゅっ」
くしゃみをする円堂.。
「帝国との試合が近いんでしょ、風邪引かないでよね」
「大丈夫だよ…へくしょっ!」
どこが大丈夫なのか。
「なあ、水緒も一緒に帝国と戦わないか?」
「え…私が?」
サッカーなんて何年振りだろう。
…久しぶりだけど、ちょっとやってみようかな。
「お前が入れば、十一人まであと少しなんだよ!」
「…うん、久しぶりにやってみようかな。明日まで考えさせて。明日、返事出すからさ」
「本当か!?ありがとな、水緒!」
じゃあ明日な、と駈け出して、円堂はまたずっこけた。
落ちはしなかったが。
(私の話、聞いてたの…?)
先が思いやられる。
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