「い、いらっしゃいませ」 「あ、それすぐ着るんで開けて貰える?」 「ははははい、畏まりました」 どもりまくっている店員に土方の財布から金を渡し、外装と値札の取った二つの着流しと下着を受け取ると足早に店を後にし、外にあるこれまたメルヘンなトイレに駆け込んだ。 「んだよ……一つしか空いてねぇじゃん。仕方ねぇ、一緒に入んぞ」 「とか言って☆本当は一緒に入りたかった癖に〜。よかったな!好都合じゃねぇか」 「うるせーよ!もう寒くて死にそうなんだよ早くしろ!」 相変わらず自分の都合のいいように解釈しだした土方を唯一空いている一番奥の個室に押し込み、俺も入ると鍵を閉めた。 「おら、お前の分、さっさと着ろよ」 「銀時、これ……」 薄いピンクに赤のハートとミミーのプリントがされている着流しと、それと揃いの下着を渡す。土方は自分が渡されたその着流しと俺の手にある水色に青い星とミッチーがプリントされた着流しを見比べて目を見開いた。 「……お揃いだ!」 「ああ?色も柄も全然違うだろ?こうゆうのはお揃いって言わないの〜」 「違う!ここ!」 土方が指差したのはちょうど着流しの腰から太ももに掛けての部分で、デカい割れたハートがプリントされている。 「おいおい、これ割れちゃってるよ?破局だよ?」 「ちがーう!ほら、こうすれば……」 よく見れば土方に渡したピンクの着流しにも同じものがプリントされていた。 ぴったりくっついた二つの布、完成したハート。 これはまさか、まさかなのか。 「二つで一つ……!銀時、お前そんなに早く俺と一つになりたいのか?困った奴だなっ!」 「……もうやだ、何この羞恥プレイ。誰か絆創膏持ってきてー!人が一人包める位でっかいのー!」 俺は滅茶苦茶嬉しそうな土方の濡れた着流しと下着をパパッと脱がせ、先程のピンク色した恥ずかしい着流しを着さす。よし、と頷いて今度は自分も濡れた着流しと下着を脱ぐと水色の同じく恥ずかしい着流しに袖を通した。 「似合うぜ銀時…」 「はいはい、分かったからお前ちょっと黙ってて…」 放っておくとすぐに電波な思考になってしまう土方の唇を塞いで言葉を奪う。 これで暫くは黙っててくれる筈だ。 「…んっ、ふ………ふうぅ、は…ん、ぶ…ちゅ、ふ」 「……は、行くぞ」 「……ん」 うっすらと勃ってきた土方のペニスと同じく反応し始めた己の馬鹿息子にこれ以上はまずいと叱咤して足早にトイレを後にする。 そしてうっとりと心ここに在らずといった顔で瞳に涙を溜め足元の覚束ない土方を半ば引きずるようにしてホテルに向かった。 * 迎えてくれたホテルマンはペアルックの俺たちを見て目を見開いた。土方に至っては俺の腕に自らの腕を絡めしなだれかかっている。最早手に負えない。 「空いてる部屋ある?どこでもいいんだけど」 「本日はごらんの通りの曇天ですのでキャンセルされたお客様もいらっしゃいますから、どちらのお部屋にも空きがございますよ」 「あー……おい土方、お前どの部屋がいいんだよ」 「…ん?…あ…これが…いい」 うっとりと俺の肩に頭を預ける土方の額をピシッと弾くと奴はハッと目を見開き覚醒する。そして部屋の写真を見ると瞳を輝かせ指を差した。 「やっぱりな……」 「何か言ったか?」 「いいや…じゃあお姉さんこのシンデレラルームって部屋で…」 「はい、シンデレラルームでよろしいっすね?」 だからいいっつってんだろ、何度も聞くんじゃねぇよこっ恥ずかしい。なんて言える筈もなく、俺はこめかみをピクリと引きつらせつつも頷いた。 「こちらがシンデレラルームの鍵となります。お部屋は五階となりますので……どうぞ幸せな一時を……」 ペコリと頭を下げたフロントのお姉さんはシンデレラの描かれたカードキーを渡してニコリと微笑んだ。しかしやはりその顔はうっすらと引きつっている。 エレベーターに乗り込むと早速土方が首に腕を回してきた。こいつは俺以上に我慢と言う言葉を知らないから恐ろしい。 「おい…コラ、もう少し我慢しろって…」 「ん、やだ……もう待てない…」 そんなことを言われても惚れている奴に求められれば悪い気はしない。むしろ興奮する。俺は求められるままにそのぷっくりとした赤い唇に口づけ……ようとした。 実際はピンポンと軽快な音を起てて開いた扉により邪魔をされ叶わなかったが。 部屋、否、シンデレラルームはもう目と鼻の先だ。 カードキーを差し込み無駄に装飾された真っ白な重い扉を開くと、まさしくそこは城の中のようだった。いや、行ったことないけど。 「わあー………すごいな!」 「ああ…すごいね……」 「風呂もすごいー!ライオンから水出てる!」 はしゃいで部屋中を駆け回る土方を横目に俺はキングサイズの天蓋付きベッドに腰を下ろす。正直な話、先程のエレベーターの中での一件で俺の息子はすっかりやる気なのだが、折角来ているわけだし喜んでいる土方を見ると邪魔するのは気が引けた。 暫くすると他の部屋を見て回っていた土方が最後のベッドルームにやって来た。 隠れミッチーがどうのこうのとぶつぶつ言いながら部屋中をくまなく見ている。引き出しもクローゼットも全て見終えた土方はギシリと音を起てベッドに上ってくる。 「ひじか…………」 「あー!隠れミッチー見つけた!なあ銀時見てこ…………っんう?」 やっと土方もノッてきたのかと思いきや隠れミッチー探し。俺の呼び掛けは遮られ、ベッドヘッドの穴の形がミッチーだったことへの感動を伝えられるが俺にはさっぱり意味が分からない。折角部屋までとって恋人同士一つのベッドにいるのにその恋人よりも隠れミッチーを優先させるとはどういう了見だ。 俺は隠れミッチーとやらに夢中な土方の顎を掴み、そのぷっくりとした柔らかい唇を奪った。 「………土方君は俺より隠れミッチーがお気に入りみたいだね」 「…………銀時、隠れミッチーにやきもち?」 「…………悪りぃかよ」 「悪くない!全然悪くない!……ふへへ…嬉しい」 「隠れミッチー探しはまた後でな」 「うん!………ふ、ぅ……んっ…は、ぁ…んちゅ」 ツルツルとした触り心地のいい薄ピンクのシーツに土方を寝かせ、夢中になって咥内を貪り、黒くツヤツヤした髪に手を入れるとひんやりと冷たかった。そう言えば全身びしょ濡れになったことを思い出す。 「髪、濡れてるな…土方、折角だから風呂入ろっか?」 「…ん…お風呂でえっちしたいのか?」 「……………」 俺はただ単に風邪をひかせてはマズいと思ったからで決して疚しい気持ちは無かったのだが、土方の目がきらきらと輝いているところを見ると、どうやら風呂でヤりたいらしいのでそのまま抱き上げて風呂場へ連れてった。 「お姫様だっこ…………俺の……王子様!」 「うるせー、落とすぞゴルァ」 「…いて……もー、素直じゃねぇな」 ふざけたことを言いながらひしっと抱きついてくる土方の額を小突く。何がどう素直じゃないのかは全くもって意味不明だがそこは敢えて追求しない。 二人してペアルックの恥ずかしい着流しを脱がせ合ってライオンから流れるお湯がたっぷりと入った浴槽に飛び込む。風呂は男が二人で入っても余裕で足が伸ばせる位広い。 「ぎんー!あわあわー!」 「あーよかったねぇ…トシちゃんあわあわだね〜」 「…欲情する?」 「………………」 モコモコとした泡と温かいお湯に浸かり足の間に座った土方の腹に腕を回す。 しっとりと白い肌に貼り付いた艶やかな黒髪。 欲情してることは確かだから何も言い返せない。今日の電波は一枚上手なようだ。 「うん…欲情する」 「残念ながら今日は何も入れてきてないぞ?遊園地は流石に入れっぱなしじゃキツいから。ごめんな、がっかりしただろ?」 「………しねぇよ!」 「とかいっていっつもノリノリな癖にぃ〜」 にまにまと笑いながら後頭部を俺の肩に乗せた土方は上目に俺の頬をツンツンとつつく。放っておいたらこのまま電波なプレイに流れてしまいそうな予感を感じ取った俺は、そのまま土方の顎を取り唇を封じ、右手をツンと尖った乳首に滑らした。 「んゃっ…ぎん、俺まだ身体洗ってないよ?」 「今更そんなんいい」 「んっ……ぁ、やぁ…」 「乳首気持ちい?」 「…ん…うん…きもちぃ」 へにゃりとくたった身体を俺の胸に預けると柔らかな桃尻が勃ちあがりつつあるペニスにぺとりと当たる。 「ぎんの勃ってる〜」 「土方のも勃ってるよ?」 「ん…、…だって…」 乳首を弄っていた右手をするりと股関に滑らせると土方とペニスも勃っていた。 「……だって?」 「………いじわる禁止」 「言わなきゃ触ってあげなーい」 「…むうぅ…ぎんが、触るからだろ」 「いいこ」 ぷくりと頬を膨らませて掴んだ左腕に痛くない程度にがじがじと噛みついてくる口から腕を離して濡れた黒髪を撫でる。 ご褒美替わりに半勃ちのペニスをきゅっと握り上下に扱き、右手は再び乳首に滑らせた。 「ん、やぁ……きゅっきゅって、やだぁ…」 「じゃあどうして欲しいの?」 「……も、もっと強く…」 俺は言われたとおりに右手で引きちぎれるくらいぎゅうぅっと乳首を捻りあげた。 「…あうぅぅぅぅ!……や、いた…いたいぃ…!」 「痛い?おかしいね〜。こっちは滅茶苦茶喜んでるけど?」 大きく震えてからぴゅくりと蜜を零したペニスは今にも達しそうだ。 「やあ…ちが…ちがうもん!」 「じゃあ、コレはなんです、か!」 「ひぃ!ひぎぃぃぃぃぃぃいい!」 湯の中で緩くペニスを扱いていた左手に力を込めると土方の身体がビクリと震え悲鳴があがる。局部にこれほどの刺激を受けるのは相当辛い、というか痛い筈だ。 「…ぅ、うえ…ひっ、く…いたいよぉ…」 「駄目、今日は泣いても許してやんない。俺にして欲しいことがあるならちゃんと言うこと」 飴と鞭とはよく言ったものだ。 ひくひくと泣いている土方の乳首を引っ掻くようにカリカリと刺激してやれば、ペニスは握ったままだというのにもじもじと腰が揺れる。そして甘い声で俺を誘うのだ。 「んっ、んっ…やぁ、それ…きもちぃからだめ…ぁん…」 「却下」 「や!あんっ……ん、も…イク!」 「うん、じゃあどうして欲しい?」 「………え?」 「だーかーら、どうして欲しいって」 「…ぅ…いや…イかせて欲しい?」 「何でドコをどうやって?」 ニヤリを笑って首まで真っ赤に染まった土方の肩に顎を乗せ、意地悪く首筋に吸いついた。おまけに乳首をきゅうぅっと摘んでやればふるりと震えて嫌々と首を振る。 「んっ…んあ、は…ぁ…お、おれの…」 「うん?」 「おれの、お…ちん、ちん…ぎんの手で…ぐちゅぐちゅして…?」 「んー、まあ合格」 「…ん……んひゃあ!?」 俺は土方の身体を抱き上げて風呂の蓋にタオルを敷いてそこに寝かせた。そして足を開き目の前に来た震えて限界を訴えるペニスを口に含む。 「ひうぅ…あっ…あぁ…とけちゃいそ…ぎん、おれのちんちん…とけちゃうぅ…!」 「ん、じゅ……ぬぷ、ぷ…」 「ひあ!……あ、や…も、でる!…くち、はなしてぇ…」 「ひってひひほ」 すでに限界だった土方は少し舐めただけでひくひくと内股を痙攣させる。 俺は必死に出さないように我慢する土方の先走りを垂らす尿道をじゅうぅっと吸い上げた。 「…ひうぅぅう!?…も、や…でるぅ!くち、はなしてぇ…!……ふ、やだ………いやあぁぁぁあああ!」 「…んんっ!…ぶ」 必死な抵抗虚しく、土方は俺の咥内に射精した。俺はそれをごくりと飲み込み、口端に残った精液を見せ付けるようにペロリと舐めると、土方はくしゃりと顔を歪ませた。 どうやらこの変態は奉仕することばかりで奉仕されることには全く慣れていないらしい。 「ご馳走様」 「…ふ、ふぇ…いやだっていったのにぃ……」 「土方がいつもやってくれてることじゃん」 「俺はいいの!銀は駄目なの!」 一度達したことで余裕の出てきた土方をさっさと黙らせるべく、ボディーソープを手にとりギャーギャーと騒ぐ土方の後孔に中指を挿入した。 「ひう!……んっ、きゅうに…いれんなぁ!」 「うるさいから。大丈夫?染みない?弱酸性って書いてあるから大丈夫だと思うけど」 「んっんっ…ぁ…う…だいじょぶ…」 ぬるぬると中を滑らせて、慣れてきたところで人差し指も挿入する。やわやわと緩んできてゆるい快感に目を瞑った土方の一番感じる場所、前立腺をぐりりっと擦り上げた。 「…ぁ…ん……ひゃううぅぅぅぅ!」 「ほら、土方の気持ちいいところ」 「あっあっ!…だめ!そこだめぇ…!」 「うそつき。前、涎垂らしてるよ?」 コリコリと小さな前立腺を擦りながら、再び勃ちあがりぴゅくぴゅくと先走りを飛ばすペニスをピンッと弾く。 「あんっ!……や、だめ!…また…またイッちゃうぅ…」 ビクリと大きく身体を震わせた土方は、腰をあげ両足の爪先だけで体重を支えている。その極限まで開かれた足の内腿はビクビクと震え、ペニスからは絶えず先走りが流れ、限界を訴えている。 「やっやあぁ!……イク、イクうぅぅぅ!!」 ガクガクと身体中を震わせ精液が溢れ出す。俺は今も精液が吐き出されてる最中だというのに徐々に大きくなりつつある前立腺を弄るのを辞めない。 「あっああああ!…も、いやだぁ!イッた…イッたからぁ!」 「うん、何回イケるかな」 「ひいぃぃ…あ、ああっ!…も、だめぇ…ふ、ふぇぇぇ……」 「言ったろ?泣いても許してやらないって」 弄くり過ぎてぷくりと育った前立腺を今度は擦るだけでなく、くの字型にした指で引っ掻くように刺激する。 「…ッ!……ひゃああああああん!」 「三回目〜」 「ああああああ!…おねが…いじらな、で…うああ!」 「お?もう次いく?」 「やだぁ!……イきたくないぃ…ひぃ!……きゃうぅぅぅぅぅ!」 「早いね〜、次いってみよう」 弄り続けている前立腺は既に大きく腫れ上がり、少しの刺激でも大きな快感を受けるようになっているようだ。段々と楽しくなってきた俺は今度はその前立腺を指で摘んで上下に揺らしてみた。 「あっ…かは、も…しぬ、しんじゃ…よぉ…」 「だーいじょうぶ、死なない死なない」 「…やだぁ…あうぅぅぅぅ!…あ、また」 「イきな、枯れるまで」 「あぁぁぁぁぁあっ!」 「ほら、まだ出るだろ?」 そう言って前後左右にぶるんぶるんと震えるペニスの先端をぱくりとくわえる。 「やあぅ!やだ!ぎん、そんなことしたら!」 土方は必死に抵抗を試みているようだが連続で絶頂に達しているせいか全く力が入っていない。俺はその好都合にほくそ笑みながら唇を窄めて、バキュームのようにぢゅ、ぢゅうぅぅぅっと思い切り先端を吸い上げた。 「ひゃあああああ!…やだやだぁ!あっぎん、たすけ…」 「大丈夫だから力抜いてごらん?」 「は、はぁ…あっやだ、なんか…なんかでるっ……や、くち…はなしてぇ」 「…んじゅ…じゅうぅ……」 「おねが…ふぇぇぇ…やだ………あっあっ…でるぅ、でちゃ…でちゃうってはぁ…!」 「………ぢゅうぅぅぅぅう」 「…ひぃい!…や、いや……いやあぁぁぁぁぁぁああああ!」 その瞬間ぷしゃああと飛び出した液体は無色透明。土方はあまりの快感に目を見開き身体中をおかしな位ガクガクと震わせる。自分の身体に起こった異変についていけていないようだ。 「…あっ…あああ!…みないでぇ……ひっく…ぅえ…あ…うぅ……とまらな、よぉ…」 「もうちょっとかな?」 「…やっ…みないで…さわらないで………」 未だ止まらぬ液体にビクン、ビクンと身体を痙攣させながら両手で顔を隠す。 俺はその光景を見ながら遂に電波に羞恥心を植え付けることに成功した喜びに浸っていた。ノリノリなのもいいが偶には嫌がって欲しいという男の性だ。少しキツくあたり過ぎたかも知れないが。 「よし、止まったね」 「…まだ…ビクビクしてる、から…さわらな、で…」 「初めての潮噴きおめでとう土方」 ニヤリと笑って泣きすぎて赤く染まった目尻と頬、そして薄く開いた唇に口付ける。 「し、しお…?」 「そう」 「おしっこじゃないの?」 「違うよ〜」 キョトンとした土方を抱き上げてバスマットの上に寝転がす。 「俺、おんなだったのか…?それとも銀時に突っ込まれ過ぎて女性ホルモンが活発に……」 「…ぶっ!…クックッ、土方はどっからどう見ても男の子でしょうよ。ココとか」 「……ひゃ!」 ココといいながら萎えて縮んだペニスをキュッと握れば、小さく鳴いて再び緩く勃ち上がる。 「男でも潮って噴けるんだよ」 「なんでそんなこと……」 「昔世話になった風俗の女が言ってた」 「……ふうぞく」 「え?いいい今は行ってないよ?」 「……どもった」 「いや、まじだから!今は行ってないから大昔の話しだから!」 「…ぅ…うぇ…俺よりふうぞくのおんなが、いいんだ!」 始まってしまった電波の被害妄想。 その後俺は泣きじゃくる土方を必死にあやして、やっと泣きやんだと思ったら「今日は俺が上に乗る」とか言い出して、でも結局出来なくて泣き出してまたあやして、とそんなことを繰り返していた。俺が土方の中に熱を吐き出すことが出来たのは明け方の四時で、二人とも極限まで疲れていたからそのまま眠ってしまった。 「んんぅ……ぎん、ぎん…」 「んん?」 「いまなんじ……」 「あー…………って、あああああ!」 「ひっ!ななな何だよ!」 「もう10時半!11時チェックアウトだろ!ほら、早く着替えて!」 寝起きで動きの遅い土方の着替えと歯磨きを手伝ってやり、寝癖を直してやる。土方の準備が終わったら自分も適当に着替えて歯を磨いて準備は整った。 準備を終えて土方を座らせた筈のソファーに行ったら土方は消えていた。俺はチッと舌打ちをして部屋中を探し回る。 「土方ー!土方ー!早く出てこねぇと銀さんお前のこと嫌いになっちまうぞー!」 「……ここ!ぎん!ここ!」 「そんなとこで何してんのお前?」 土方はトイレにいた。トイレと言っても小でも大でもないらしい。扉が開けっ放しだったからだ。 「隠れみっちー!」 「…………よーし分かった、はい行くぞー」 ニコニコとトイレの隠れミッチーを指差す土方を抱えて部屋を出た。 「昨日預けた荷物って………」 「…………あ、ははははい!こ、ここここちらになります」 土方を姫抱きしたままフロントに降りたせいか、引きつりながらも笑顔で迎えてくれたお姉さんの顔から笑顔が消えてただ引きつっていた。 「ほら土方、お土産持つから降りろって」 「……ん、王子様☆」 「………………」 大量の荷物を抱え、背中には土方曰わく自分へのお土産というでっかい人形を背負いこむ。 唯一の救いは昨日濡れてしまった服が乾いていたことだ。あの恥ずかしいペアルックで電車は流石にキツいものがある。 「なあ銀時ー」 「なぁに、銀さん眠いんだけど…」 「すっごい楽しかった!」 ガタガタと電車に揺られながらにっこりと笑い俺の手を握る土方の頭には未だにミミーの耳が付いている。 「はいはい、よかったねー」 「なあ銀時ー」 「……今度は何だよ」 「俺、帰ったら銀時の変態プレイにも付いていけるようにいっぱい勉強するからな!」 「………………」 自慢気に胸を張る土方に、「お前はそのままでいいよ」なんて、そんなことを思ったなんてことは言ってやらない。 end |