あー、身体中痛てぇ。

意識はうっすら戻ってきているのに、疲労と痛みで目を開くことが出来ない。
やたら頭がぼうっとするから恐らく熱でもあるのだろう。
どうせ仕事なんて来やしねぇんだし、こんな状態の俺を無碍に起こそうとするやつも居ない。
再び深い睡眠に意識を持って行かれそうになった俺の頬に生暖かいなにかがポタリポタリと落ちた。

「なに、してんの」

瞼をこじ開ければ視界一杯に広がるぐしゃぐしゃな顔。
驚きに見開かれた瞳からじわじわと盛り上がり、やがて止めどなく溢れ出した涙が俺の顔を濡らす。

「…ぎ、…ぎんとき…ぃ…」

くしゃっと歪んだ顔に溜め息を吐いて溢れる涙を袖で拭ってやる。

ああもう、情けねぇ。





ぶっさいくな顔して俺の名前を連呼し泣きじゃくる土方の頬を撫でて落ち着かせる。

「大、丈夫…だから。んな泣くなって」

こいつを宥めるのにも相当慣れて来たが、土方の涙腺は一度弛むとなかなか止まらない仕組みらしく下手すりゃ小一時間泣き続けることもある。
自己中で超プラス思考な土方も社会的にはかなり高い地位にいて、仕事中は常に気を張っているせいか、その反動が俺に降りかかってくる訳だ。勘弁して欲しい。

「土方、」

こいつを泣き止ませる方法を知らない訳じゃないしそんなに難しいことじゃないのだが、何分今は身体が言うことを聞かない。
仕方なく中指だけちょいちょいと動かして来いと合図すれば、土方はひくひくと子供みたいにしゃくりあげながらも顔を近づけた。

涙でぐしゃぐしゃぐしゃな顔はあまりに酷く滑稽で、でも可愛くて。

ああ俺も末期だなと苦笑しながら重い腕を布団から出し、さらさらと髪が流れる後頭部をぐいと引き寄せた。

「……んぅ…」

薄く開いた唇を、口付けると言うよりはむしゃぶりつくように覆いその柔らかい感触を楽しむ。土方の唇は男にしては肉厚で柔らかくて、凄く気持ちいい。
それを伝えた時はお前だってぷっくりしてて可愛いし気持ちいいよと噛みつかれて嬉しいんだか悲しいんだかよく分からなかった。
暫く弾力のある唇の感触を楽しんでいると先に焦れた土方が尖らせた舌先で誘ってくるのにほくそ笑み、今度は舌にむしゃぶりつく。
感じる苦味に若干眉を寄せつつも吸って、噛んで、絡ませる。
流し込んだ唾液を白い喉がゴクリと嚥下するのを確認し、ご褒美とばかりに上顎のざらざらしたところをべろりと舐めてやれば、柳眉がきゅっと寄せられ着流しを掴む手が震えた。

「ふ、ぁ」
「泣きやんだ?」
「は、はぁ…そんな…俺の唇が好きか、そうかそうか」
「ああもう大好き大好きやばいやばいー」
「…………」

布団にぽてりと倒れ込んだ土方はむっと頬を膨らませ布団越しに俺の腹をぽこぽこと叩いた。
この電波は常に自分が優位に立っていたいタイプで、最近は受け流すことを覚え始めた俺に若干ご機嫌斜めだ。

「で、お前はなんでここにいんの?」
「看病しにきてやったんだ!銀時は寂しがり屋さんだからな!」

自信満々に言う土方と額に乗せられたべしゃべしゃな雑巾を見て納得する。
少し視線を動かせば異臭を放つ黄色いお粥らしき物も発見されて見てみぬふりをした。

「あ、そう。でもこれ雑巾ね、覚えといて。あともう大丈夫だから帰って」
「やだ。看病するって決めた」
「いやいや迷惑だから。つーかお前仕事は?」
「有給とった。三日間」
「……帰んなさい」
「いやだ」

ああもう面倒くさい。
こいつの為に言ってやってんのに。なんでこんな頑ななんだ。
はあ、と重いため息を吐けば先程むしゃぶりついた唇をきゅっと噛みしめて、あ、やばいと思った時には閉じた瞳からぽろぽろと雫が落ちた。

「…おれじゃ、だめ…なの?」
「違うって…」
「ぅ、ふぇ……じゃあなんで、かえれって、い…ぅ、っく、…ひっ…」
「だから!」

振り絞った声にびくりと肩を揺らした土方に良心が痛む。

だけど、

「情け、ねぇだろ…起きあがれねぇし。俺だって一応お前に惚れてんの。こんな情けねぇ姿、見られたくねーんだよ!分かったか馬鹿野郎。分かったらとっとと帰れ!」

ばさっと布団を被り視界を遮断する。
こんな態度、こんな発言、調子に乗るに決まってる。
しかし予想に反して言葉は返ってこない。
変わりに確かな重みと熱を感じて、ああそう言えばこいつはこういう奴だった、と諦めて仕方無く布団から顔を出した。

「なにしてんの」
「抱き締めてる」
「抱きついてるの間違いじゃねーの」
「いいの」

熱で頭がぼうっとする。
どうしようもなく興奮しちまうんだ。焼けた草の匂い、噎せ返るような血の香り、じくじくと痛む傷から広がる熱に。

俺はおかしいのかもしれない。

「マジで離れろ、やばい」

布団越しに伝わる熱に神経が焼き切れそうだった。

「興奮、すんだろ?」

土方の顔がゆらゆらと歪んで見える。

「分かってんなら…」
「分かってるから来たんだ」
「テメェ、どうなっても知らねーぞ」
「大丈夫だ。銀時だもん」

なにがどう大丈夫なのかさっぱり見当が付かないが、首筋に擦り寄る土方の髪からふわりと薫る甘い香りにぷつりと理性の切れる音を聞いた気がした。





「ぅ、ふ…やぅ」
「まだイクなよ?自分で根元抑えてろ」

着流しの裾を俺の顔に落ちないように噛み締めた土方のぱんぱんに膨れ上がったペニスにむしゃぶりつく。
起き上がれない俺の口に自らペニスを差し出す土方の膝はがくがくと震え、今にも折れそうだ。
しかしそのまま座り込んでしまえば俺の傷が開くのは目に見えていて、土方は着流しの裾を涎でだらだらにしながら必死に堪えている。

「や、もう、イ…く…!」
「駄目だって。抑えてろよ」
「ぅ、できな…ふ、ぇ」
「じゃあこれ使えば?」

布団の脇にあった土方の刀から紐を抜き取り涙で潤んだ瞳の前でちらつかせる。
土方はきゅっと唇を噛みながらも震える手でそれを掴み、解放を求めて揺れるペニスにくるくると巻きつけていく。

「そんなんじゃ出ちゃうんじゃねぇの?」
「も、むりぃ…ぁ、ちから…はいんな……ひぎぃ!?」
「ほら、こんくらい強く縛んねぇと。な?」
「う、ぁ…あ…」

ぎゅっと縛ったペニスは赤黒く変色し、解放を求める亀頭がだらだらと涎を垂らしながらぷるんぷるんと揺れていて美味そうだ。
粘ついた先走りが俺の口元にツゥッと糸を引き雫を落とす。唇に落ちたソレをべろりと舐めとり可愛い亀頭に吸い付いた。

「ひゃあ!ぅ、あぅ…だめ、らめぇ…!」

ああ呂律が回らなくなってきたなと何処か他人ごとのように傍観しながら尿道口を尖らせた舌先で抉る。
唯一自由に動く手は着流しの間からちらちらと覗くツンと尖った乳首をこりこりと摘み、引っ掻き、もう片方の手でたぷたぷになった睾丸を揉みしだく。

「ゃ、もお…あ、あう!だめっ!…いっひゃう、…イッ……!」

緩んだ尿道口をじゅるっと吸い上げれば目を見開いた土方の身体が可哀相な程がくがくと震えて堪えきれない涙を零した。

「いひゃ、…らめ、…らめなの…」
「ん、なにが駄目なの?」
「いっひゃ、らめ」
「うん?いいよイッて」

とっくに意識は飛んでいるのに必死に堪える土方の太ももを掴み引き寄せる。
俺の首を跨ぐようにさせ、腰を落とせばカクンと折れた膝と心地いい圧迫感に眉を寄せた。

「あ、ごめ……」
「首なら大丈夫だから」

少し理性を取り戻した土方の目が紐を解いていいかと問い掛ける。
俺はそれにニヤリと笑い、可愛いペニスをくわえ、昔馴染みだったキャバクラのねぇちゃん直伝のバキュームフェラをお見舞いしてやった。

「あ!?…ひっ、い……うああああああ!」

俺の髪を掻き回し、背筋をこれでもかと言うほど逸らせ、喘ぎと言うより最早絶叫に近い声を上げ土方は達した。

「ん、ちゅ」
「ひあぅ…!」
「気持ちかった?」
「は、ふ…ぅあ…あ、あ…」

荒い息を吐きながら涎を垂らす土方を引き寄せべちゃべちゃな口元を舐めまわす。
暫く唇の感触を堪能して視線をずらせばとろけた瞳からぽろぽろと涙を零し、イきたい、イきたいと小さく呟く土方に己の加虐心に欲望という名の炎が灯るのを確かに感じた。

「俺動けないから自分で慣らして?痛いのはイヤでしょ?」
「ん、ん」

コクコクと頷きそろそろと後孔に手を伸ばす土方の手を掴む。

「俺によく見えるように、ね?」

お前の身体のことなんてお前以上に知ってんだから。吐息と共に耳元に囁けばぶるっと震えた土方は素直に身体を反転させ四つん這いになると唾液と先走りで濡らした指を後孔に這わした。

「一本じゃ足りねぇだろ?遠慮しねーでもっと突っ込めよ」

最初は中指がゆっくりと赤い襞の中に消えは出てを繰り返した。
そのうち物足りなくなったのか、一気に二本の指を差し入れ、合計三本の指が大胆に後孔を解していく。

「いつもそうやってオナってんだ?随分緩くなっちまったもんだな。俺の謙虚な息子じゃ物足りねぇんじゃねーの?」
「や、ぎんのがいい…!ね、ちょーだい…おねが、…ひゃん!そっち、さわっちゃ、やぁ…!」
「そっち?だらだら涎垂らしながら震えてるこいつ?土方くーん、こいつなんつーの?」

行き場を失った熱を吐き出そうと右往左往にぶるんぶるんと揺れるペニスをピンっと悪戯に弾いてやれば可笑しいくらいに身体が震える。
あんまりびくびく震えるものだから面白くてそればかり繰り返してたら土方は上半身を倒し、下半身だけ高く掲げ、自らの指をくわえ込んだ後孔をきゅうきゅう締め付けながら寝間着越しに起ち上がった俺のペニスにすりすりと頬を寄せあむあむはみながら虚ろな瞳で涎を垂らした。

「はうん…ちんちん、とおしろのぉ…ちんちん、びくびく、…してゆ、きもち…あつ…」
「…ひん、ほひぃ…これぇ、ほし、の…」

最早なんて言っているのかも分からなくなってきた。
射精せずに何度達したのか。普通なら今頃空っぽになっている頃だろう。

「もぉ、ちょーだい…ここ、びくびくって…ぎん、ほひぃ…」

少し首を上げれば俺のペニスに頬を擦り寄せる土方と目があった。
ギンギンに立ち上がり解放を訴える愚息を掴み、擦り寄り、微笑む。

ああやばい、壊しそうだ。

熱でぼうっとする頭をフル回転させる。
前々から土方には淫乱の気があると感じていたがこんなになるまで焦らすのは初めてかも知れない。

「好きなだけ喰えよ」

ふわりと微笑んで俺の寝間着を下着ごと刷り下ろした土方はゆるゆると身体を動かし起ち上がる俺のペニスを掴み後孔に当てると一気に腰を下ろした。

「…あ、…あ、」
「はっ、すっげ。うねうね」

ねっとりと絡み付いて離さない内壁の締め付けと熱に浸っていると、挿入の衝撃に白い喉元を晒してぶるぶる震えていた淫乱は早速腰を振り出した。

「あ、あん!すご、ぎん…いっぱい…」
「お前ッ、ちんこすげーことになってるよ?ほら、ぬるぬる」
「はぁぁぁぁん!や、あたっちゃ、きゃぅ…!」

てらてら光る亀頭をぐりぐりと親指でこね回せば甲高い声を上げてまた達したらしい土方は、自ら動いたことにより俺の切っ先が前立腺をゴリっと擦りあげる感覚に犬みたいに鳴いて無我夢中で腰を揺らした。
俺はなにがなんだかよく分からないまま土方の細い腰を掴み、やっぱり無我夢中で腰を振った。

「あ、ああああああ!」
「は、はぁ…ぅ…あちぃ…」

ぶるぶる震える土方の腰を押さえつけ自らの熱を叩き込む。
だらだら涎を垂らし自らのペニスに食い込んだ紐をかりかりと引っ掻く土方の顔は大分イッてしまっていて、流石に限界かと熱を堰止めている紐を外してやった。

「う、ああ…あ、…ひぎいいいいいい!」
「うわ、ちょ…ッく、…なんだこれ…!」
「あ、ああっ!あ、ぅあ!」

ぎゅるぎゅると絞り取ろうとする内壁に負けないように腰を突き上げれば堰止めるものが無くなった土方のペニスからは噴水のように精液が飛び出し俺の腹を濡らす。

「は、あ、…はあ…も、おかしく…なる…!」
「おかしく…なれよ!」

身体が、頭が、腹が、燃えるように熱い。気持ちいい。

お前も、俺のようになればいいんだ。




「ッ、う…痛てぇ」

腹が異様痛い。傷跡を押しつぶされているような感覚に視線を下にやれば、なるほど。すぅすぅと寝息を立てる土方が俺の腹を枕代わりにして寝ていた。

「おいコラ、どけ」
「ん、……ぅ…」
「重い」
「ふぇ…?…あ!…起きたのか?」
「誰かさんのせいでね」

パッと顔を上げた土方はきゅっと眉を寄せピシッと固まったように動かない。
不気味に思いつんつんと腰をつつけば声にならない悲鳴を上げ、涙目で俺を恨めしそうに見上げた。

「俺だって、動けねぇもん…腰、痛い」
「ああ?こけたか?」
「お前がずっこんばっこん好き勝手に突っ込むからだろ!嫌だって言っても止めてくれないし、イかせてくれないし、言葉責めだし、羞恥プレイだし…」
「へ?」

そう言えば下半身が大分軽い気がする。
腹は痛いが不器用に巻かれたゆるゆるの包帯を見ると、土方が痛む身体に鞭打って必死に巻いた、ということだろう。そして途中で力尽きて俺の腹で寝ていたと。

「も、俺途中で訳分かんなくなって…」

そう言ってくしゃりと顔を歪ませてぼろぼろ涙を流す土方は、時々しゃくりあげながら俺が昨夜相当キていたらしいこと、自我を失って訳が分からなくなったことをゆっくりと話してくれた。

「あー…ごめん、な?」

時々あることだった。
戦場、傷、血の匂い。
人を斬れば斬るほどに、戦の後の無残な大地を見る程に、確かに興奮している自分がいた。
欲を吐き出す為に拾った女や商売女を相手にするが満たされるどころが止まるところを知らない欲に怯え、気味悪がる奴らばかり。

土方の身体のあらゆるところに残る痛々しい赤紫色の噛痕はきっと俺が残したものなのだろう。
申し訳ないと思う反面、そうでなければ嫌だと思った。

「…ふ、ぇ…無事で、よかった…」
「え?」

知らず知らず握りしめていた拳から力が抜ける。
怖かった、きっとそう言われるだろうと思っていたし、覚悟もしていた。

「…?、何とも、ないんだろ?」
「え、ああ…こんくらいじゃ死なねぇよ」
「俺のおかげだぞ!出すもん出し切ったらすっきりしたんだきっと!」
「なあ、土方…俺がまた昨日みたいになったら、どうする?」

きょとんとした顔で首を傾げた土方は少し考えるような素振りをした後にへにゃっと笑い口を開いた。

「銀時は変態だからな!次は俺もちゃんと着いていけるように頑張る!」
「…なんで、」

痛かったんじゃないのか、自我を忘れる程に責め立てられ怖かったんじゃないのか。

「だって、ぎんは俺無しじゃ生きていけないだろ?」

腰に回された腕にきゅうぅっと締め付けられて腹の傷が痛む筈なのにどこか心地いい。
じわりと瞼の裏に溢れる液体はきっと腹の傷が痛むからだ。

「土方、」
「んー?」
「おいで」

布団の右側に寄り唯一自由に動く腕を広げれば土方は嬉しそうに笑って痛む腰を引きずり這い上がってきた。
腕の中に収まった身体は特別小さくも細くもない男の身体なのに擦りよる姿が可愛くて愛しくて仕方ない。

「ぎんが優しい!すきー!」
「…知ってる」
「俺、もっともっと変態の勉強する!」
「もう十分だと思う」
「むぅ、覚えてないくせに…」
「…はは、」


(好きだよごめん、あいしてる)


「え?なんか言った?」
「何でもねぇよ、早く寝ろ」




end






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