住んでいるマンションの一室で白咲のテスト結果をまとめていると、パソコンの傍に置いていた携帯がバイブ機能で揺れる。画面を確認すれば嫌な2文字が見え思わず顔を歪める。

「…もしもし」
『夜分遅くに失礼します、神崎監督』
「…何の用ですか、黒木さん」

フィフスセクターの、所謂通達役をしている黒木と言う人物。独特で不気味な雰囲気を持っている彼はあまり得意ではない。
通達役ということで練習試合に関することやフィフスセクターの決定事項を伝えるため、こうやって連絡してくることがある。面倒だから全てファックスやメールなんかの書面で送って寄越せば良いのに、とつくづくそう思う。

『いえ、…本日転校生が入部したと聞きましてね。是非聞いておこうかと』
「確かに転校生は入部しましたけど、流石、随分と情報がお早いんですね」
『こちらにもこちらの情報網というものがありますので』

嫌味を言ったつもりが淡々と返答をされ、更に苛立ち増す。情報網とは何のことか、分からないけど白恋にスパイでもいるのだろうか。いや、身内を疑うのはやめておこう。

「聞きたいこととは?能力ですか?入部テストの能力結果なら今まとめている最中ですけど」
『そうではなく、彼はフィフスに従順かそうではないか、聞いておくべきかと。ああ誤解はなさらずに、どの学校にも転校生などが入部したら必ずお聞きすることなので』
「…さあ、まだ会ったばかりなので彼のことはさっぱり。前の学校でのことを調べたらどうです?こちらが調べるより貴方たちが調べた方が早いでしょう」
『…それもそうですね』

電話越しに聞こえる静かな笑い声。試しているようなその笑い声も嫌になるが、生憎私は逆らえる立場にいない。
フィフスセクターに逆らうようなことがあれば、即刻廃部…なんてことも全国ではあると聞いたことがある。それに何より、勝敗指示で白恋が意図的に不利になるのはなるべく避けたい。私の行動で、白恋サッカー部を潰させるわけにはいかないのだ。

『神崎監督のご意見も是非色々と聞きたかったのですが、お時間も遅いのでこれで失礼します』
「ええ、それでは」

プツリと切れた電話に安堵のため息をついて、机に携帯を置く。
他人の、フィフスセクターの顔色に敏感ではないと生き残れない今の中学サッカー界。嫌な時代になったものだ。

「…円堂が知ったらどう思うのか」

9年前、雷門サッカー部を全国大会優勝に導いたキャプテンがこの管理サッカーを知ったら、きっと…。なんて、今日本にいない彼を考えるのはよくない。
苦笑いをしつつ、パソコンに白咲のデータを書き込んだ。…ついでに他のメンバーのデータも更新してしまおう。

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