「神崎監督」
「雪村?どうかしたの」

部活も終わって、部室の施錠をしていると背後から声をかけられる。恐らく自主練習をしていたであろう雪村だった。鍵が閉まったのを確認して少し離れた場所に立っている雪村に向き合う。何やら真剣な顔、言いたいことは大体分かっていた。

「いつになったら、俺は一軍に入れるんですか」
「…またそれを言う」
「俺は真剣です!」

突然荒げられた声に思わず肩を揺らす。それ見ていた雪村が小さく「すいません…」と謝罪する。
決して彼は悪い子ではない、むしろ雪村は選手としてはとても良い子だ。しかしその真っ直ぐすぎる性格が故に周りを見ずにプレーを行う姿が、チームプレーを主体とするこの白恋では邪険されていた。これが実力は十分なのに二軍にいる彼の実態だ。

「前にも言ったけど、周りの見れないストライカーは駄目になる。確かに雪村みたいな優秀な選手を伸ばしたワンマンプレー行う方法もあるかもしれない。でも白恋はそういうプレーはしない、そうでしょ?」
「…」
「私ね、雪村には期待してるのよ。周りに打ち解け込めたら最高のストライカーになれるって」
「褒めても無駄ですよ。そうやって部員みんなにも言ってるし」
「そりゃ私は監督として、みんなに期待してるもの。勿論あんたも含めてね」

私より低い位置にある雪村の頭をそっと撫でる。雪村はその私の手を払い落として後退り。相当嫌われてるのかな、私。

「そうそう、今日は白咲のテスト付き合ってくれてありがとう」
「…結局あの白咲って奴は一軍入り?」
「まあ…正キーパーがいなくなっちゃったからね」
「はっ、タイミングの良い奴」

嫌味を含めて笑いながら言う雪村を「運も実力の内よ」と一つ小突く。ギロリと大きな瞳が私を睨むけど気にはしない。

「で、また自主練習していくの?」
「…一応」
「部活の練習で疲れてるんだから程々にしなさいよ。今日こそ付き合おうか?」
「いらない!一人でやるから良い」

そんな全力で拒否しなくても良いじゃないか。苦笑しながら「じゃあ頑張ってね」と一言言って私はグラウンドを立ち去った。




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