「冬は嫌いだなあ。」
長い長い北海道の冬も終わりに近づいてきて雪もやっと溶け始めたここ最近。道の端にはまだ雪の固まりが残っていたけど大分溶けた方だった。
「どうしたんだよ、急に」
隣を歩く真狩が口元のマフラーを揺らし言った。真狩はとても寒がりだから冬の時期は口元までマフラーを巻いている。とても温かそうだけどサッカーには不向きだと思う。私には関係のないことだけど。
「だって冬は真狩の綺麗な顔見れないじゃん」
そう言うと真狩は髪の毛で隠れていない方の頬を真っ赤に染め「バカか」と私に言う。バカじゃないよ、失礼しちゃう。 冬の真狩はマフラーを口元まで上げてるから、顔の全体が見れなくなる。そうじゃなくても左目は隠れているんだから見られる顔は右辺りの4分の1だけ。
「あと、ちゅーが出来ない」
言い放った瞬間真狩が歩くのをやめた。「どーしたの」って言いながら彼の顔覗き込むと真っ赤っか。普段クールな彼が真っ赤なことが面白いと思ってにやにや笑ってしまう。
「、名前!」
振り返れば真狩のドアップ。肝心のマフラーは口元からは外されていた。あ、と思った瞬間には唇には柔らかなものが触れた感覚と小さなリップ音。そしてゆっくり離れていく真狩の顔。
「まかり」 「…マフラーぐらい外せば、キスぐらい、出来るから」
マフラーを整えて私をじっと見て、急に恥ずかしくなったのか彼は猛ダッシュで帰って行ってしまった。 なるほどキスするには真狩からして貰えば良いのか、そうかそうか。もう一回にやにやと笑ってから多分追い付かないだろうけど真狩の後を追いかけた。
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