どうして私はこうタイミングが悪いんだろう。
私の手には大きなゴミ袋、そしてここはゴミ置き場のある裏庭。私の隠れる木の少し先には木瀧くんと女子生徒。どうやら私は女子生徒が私も大好きな木瀧くんに告白する現場に鉢合わせになってしまったようだ。
鉢合わせと言ってもあちらの2人が気がつく前に私は隠れることが出来たのだが。このまま教室に帰るという手もあったのが、木瀧くんがどう返事をするのか興味はある…なんて自分の運の悪さに少し感謝した。
ああ、でも、木瀧くんがモテるって初めて知ったかも。確かに見た目は良い方だと思うけど、私は決して見た目なんかで選んだつもりはない。

「ごめん、君とは付き合えない」

見た目に反している低音ボイスがその女子生徒にそう告げた。その子は「どうして?」なんて言うが木瀧くんはだんまり。そりゃ木瀧くんみたいな男の子が好きでもない子と付き合うような男に見えます?見えないでしょ。そう女子生徒に突っ込んでやりたかったがこっちは隠れている身。口出しは出来ない。

「好きな、人がいるんだ」

木瀧くんは典型的なテンプレ通りの台詞を言った。断るのには丁度良い台詞だ、なんて思うけど彼の目が嘘を言ってるようには見えなかった。好きな人いるんだ、木瀧くん。チクンと胸の辺りを針で刺された感覚に襲われる。それはそれは、そっちの方にも興味がありますね。

女子生徒は泣き出してしまった様子、しかもパタパタと足音がこちらに向かってくる。まずい見つかる。私の横を走り去る際に彼女は私を見て驚いた顔をした後、キッと睨み「あんたのせいよ!」って捨て台詞を吐いてどこかへ行ってしまった。私のせいって、まさか私が覗き見してたから失敗したとでも言いたいのかよ。

「で、名字はいつまでそこにいるんだ」
「…バレてた?」
「俺からだとゴミ袋がはっきり見えてたぞ」

うわ、恥ずかしい。そう言うと木瀧くんは「バカ」とただそれだけ言って私の持っていたゴミ袋を奪っていった。仄かに頬が染まっていたのはきっと告白現場を見られてしまったからだろう。
行ってしまった木瀧くんの背中を追いかけていると急に彼が止まるもんだから、背中に激突してしまった。痛いじゃない、鼻を擦りながら彼を見上げる。

「どこから見ていたんだ」
「えーと、初めの方からかな?」
「お前って奴は…!」
「ご、ごめん」

謝るからゴミ袋で叩くのはやめてください!って、あれ。

「ゴミ袋しか見えなかったのによく私って分かったね」

確かに彼はゴミ袋が見えたと言っていたはず、それなのに木瀧くんは私の名前を呼んで「いつまでそこにいるんだ」と言った。おかしいじゃん。
そんな説明をしたら仄かに染まっていた頬は真っ赤に変わる。え、私おかしなこと言いました?
「ねぇ、木瀧くん」「ちょっと黙っててくれ」ゴミ袋をボスンと地面に落とした後に木瀧くんが地面にしゃがみ込み俯いた。黙り込まれたら私も困っちゃうよ。
私も彼の隣にしゃがみ込むと彼はゆっくりと話し始めた。

「…俺、好きな人いるんだ。それが何故か結構周りにバレててさ、多分さっきの女子も知ってたんだろう」

俯いたまま木瀧くんはそう言った。
…興味はあるけど、そういうのはあんまり聞きたくないなぁ。興味関心は除いて、好きな人が思いを寄せてる人の話なんて聞きたい人はいないでしょう?

「さっきの女子が「あんたのせいだ!」って叫んだの聞いて、ゴミ袋持って立ち聞きしてたのが名字って、分かった」
「それ、は」

待って待って、じゃあさっきの子は私が立ち聞きしてたから失敗したと言った訳じゃなくて、
良い意味で直感した瞬間に私も木瀧くん同様真っ赤になった。どうしよう、こんな顔木瀧くんには見せられないと私も俯いた。

「名字」
「き、たきくん」

俯いていた顔は木瀧くんによって上げられてしまい、真っ赤な木瀧くんの顔と目が合う。ドキドキと思わず良い方向に期待してしまう自分を早くどうにかして欲しいな。

「俺が好きなのは、名字だ。俺と付き合って欲しい」

出された手はふるふる震えていて、木瀧くんの目はいつものように覇気はなかった。あぁ、もう好きだ。
私は木瀧くんの手を握ってへらりと笑って見せた。



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