「大和」
グラウンドの真ん中で立ち尽くす大和を見つけて声をかけると彼は少し間を置いて振り返った。その顔にはいつものような堂々と、自信に満ち溢れた大和はいなかった。仕方がないか、雷門に負けちゃったんだから。
「覇気がないよ」 「うるせぇ」 「負けたから落ち込んでるの?らしくないよ」
ピクリと大和の肩が揺れる。図星らしい。 そりゃフィフスセクターが推し進めていた管理サッカーと革命派が主張した自由なサッカーの行方を決める、大事な試合に負けたんだ。しかも管理サッカーは大和の父である大悟さんの意思、ファザコン大和にとっちゃ負けは更に辛いことだ。
「…大和?」 「親父に俺の存在を否定された」 「え」 「自由なサッカーも良いものだな、私は間違っていたのかもしれない。…親父がそう言ってたのを聞いたんだ」
フィフスを信じていた者には胸に刺さるその言葉。 特に大和は昔から大悟さんの為にと全てを捨ててサッカーに打ち込んでいた。辛い特訓を経て、強力な化身も手に入れた。 ずっと見てきた私だから知っていること。大和は全ては大悟さんの理想のサッカーの為にと頑張ってきたんだ。それを張本人に否定された。それ以上に辛いことはないだろう。
「何故お前が泣く」 「え、あ…」
大和に指摘されて初めて気がつく涙の存在。気がついてからただただ溢れるだけ、止めようとしてもなかなか止まらない。
「名前」 「やま、と」
大和の辛そうな顔を見ると更に涙は溢れ出る。なんで、あんたが泣かないで私ばっか泣いてるのよ、むかつく。 見ないでよと言うように彼の胸に額を押し付けると、大和は私の背中に腕を回してくれた。優しいんだ、と思った瞬間に頭の上からは嗚咽のように抑え込んだような声が聞こえた。 なんだか私も腕を回さなきゃいけない気がして、大和の背中に腕を回した。
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