キラキラと街中を彩るイルミネーション、そこを賑やかに歩くの大半はカップルや家族や友達などなど。私は溜息をついて、一人壁に寄りかかりそれを眺めた。
「クリスマスの予定、絶対に入れるなよ」
終業式の帰り道に彼、星降は確かにそう言った。彼とは付き合ってはいたし、クリスマスはデート出来るかなあと思ってきたけど、その言葉に思わずキュンと来た。でも続けて「まあ、お前友達少ないし予定なんか入るわけないか」なんて言うから全て台無しになったのだけど。 それから、その日の内にクリスマスの何時どこに集合とメールが来て、あぁ冗談じゃないんだと携帯画面相手ににやけたのは新しい記憶。
だが、どうだ。しっかり服を考えてメイクもして、何度も何度も身だしなみを確認して来たのに、奴はいない。もしかしたら私が時間や場所を間違えたかもしれないとメールを確認したけど、私は間違えていない。
「星降の馬鹿」
ぽつりと奴への不満を呟く。虚しさは更に増して、目には涙が溜まる。 もう帰ってしまおうか、ここに居ても虚しさが増すだけだ。ブーツの踵をコツリと鳴らせ、その場を立ち去ろうとした。
「名字!」 「ほ、しふる?」
後ろから聞き覚えのある声、星降だった。彼は普段大きな声を出さないし、何より肩で息をしていたことに驚いた。どんだけ走ってきたのよ、呆れと同時に嬉しさが込み上げてきた。
「…遅い」
来てくれたことは嬉しくても、待たされたことは腹立たしい。頬を膨らませ睨み付ければ星降は「ごめん」と言って、壁に寄り掛かって息を整える。
「これ、店まで受け取りに行ってたら遅くなった」 「何、これ」
星降の手にはシンプルなデザインの小さな紙袋。小首を傾げて問えば彼は言葉を濁すだけ。
「ここじゃなんだし、公園行こうぜ」
紙袋の持っていない方の手で自然と私の手を取る。冷えた私の手にじんわりと伝わる彼の熱。とても心地よかった。 紙袋の中を知って、私が涙するまであと数分。
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