私は今までずっとギンちゃんの為に生きてきた。“亡くなったギンちゃん”の為に。だけど今は違う。ギンちゃん、貴方の為に生きれなくてごめんね。 「総隊長はん、ホンマいけずや!肝心なとこ黙って話さへんのやさかい!」 「でも駄目とも言いませんでしたから、このままでいいってことでしょうか…」 総隊長という人に会うと決めた後も、やはり面会するまでにしばらく時間が掛かり、ようやく会って話をしてみたところで人間と死神が愛し合うことを簡単に認めてもらえるはずもなく、総隊長は最後まで首を縦には振らなかった。しかし横に振ることも然り。言ってしまえば見て見ぬふりをしてもらえるということになるのだろうか。完全に認めてもらえるとは思わなかったけれどこんなに曖昧な答えを貰うとも思っておらず複雑な気分になったのだが、隣の彼はもっと複雑な気分だったようで部屋を出てからもブツブツと文句を言っている。見慣れた隊舎に戻り、彼は躊躇なく、ある一室の襖をガラリと開けた。 「遅なったわ。すまんなイヅル」 「…そろそろボクの胃に穴が開きそうなんですが…」 「あの、イヅルさん。私からもごめんなさい…」 「えっ、い、いえ!柚子さんがそんな謝ることでは…」 「イヅル顔赤いんと違う?」 「えっ!?」 そこには青い顔をしてイヅルさんが私達を待っていてくれた。総隊長に会いに行くと私達が言い出したとき、イヅルさんは強く反対した。総隊長が認めないと一喝した時が本当に最後。ギンちゃんの身は勿論、私の身も危険であると心配してくれていたのだ。しかしそれでも諦めようともしない私達を見てとうとう折れたのか、総隊長に会うまでの準備をしてくれたのだった。 「ギンちゃん、少しイヅルさんと二人きりにさせていただけませんか?」 「えっ」 声が先に上がったのはギンちゃんでなくイヅルさんだった。ギンちゃんは散々ごねた後にイヅルさんを一睨みしてしぶしぶながらも部屋の外へと出て行った。シンと静かになった空間が私達を覆う。 「…改めて、色々ありがとうございました」 「顔を上げてください。ボクは何もしてませんよ」 「…イヅルさん。ギンちゃんの傍に、ずっといてくださいね」 「…柚子さん?」 伝える言葉はただひとつ ギンちゃん。これから私は私の為に生きていくよ。貴方はそれを喜んでくれるだろうか。 130319 |